ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
特集 Biz.China 中国ビジネス最前線
莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
【第216回】 2014年7月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]

中国は技術者・熟練工の不足が深刻
年率4割増で伸びる産業用ロボット市場

1
nextpage

 しばらく前、江蘇省塩城市を訪問したとき、地元の技術学院にも立ち寄った。中国の技術学院というのは、日本の専門学校に相当するが、学位的には短大のようなものだ。これまでは、大学に進学できる学力のない若者が行く教育機関という印象がどうしても強かったので、技術学院で勉強している学生は2等品と見られる風潮もあった。そのためか、技術学院には、地方出身、農村出身、所得が低い家庭出身の学生が多い。

引く手あまたの技術学院の卒業生

 しかし、大学の過剰募集により大学生の質が大幅に落ちた今は、むしろ手に技を持つ技術学院の卒業生のほうが社会的に歓迎されている。数年前、同じく江蘇省にある常州市の技術学院のIT学部を訪問した。そのとき、学部内を案内してくれた同学院の責任者の、「うちの卒業生は引っ張りダコになっている。就職先としては、一人が平均8社ぐらいを選べる」という言葉が印象に残った。数十社を回っても採用してくれるところが見つからず苦悩している大学生を尻目に、技術学院の卒業生は8社のなかから自分の一番行きたい会社を選ぶため、精神的な余裕が全然違う。

 私が立ち寄った塩城市の技術学院もそうだった。廊下には優秀な卒業生の写真が張り出されている。その学生の立派なところを書き並べているだけではなく、その年収も書かれている。大卒の年収を上回っているのが一目瞭然だ。

 教室のなかには、「技能が生活を変える」「技能が人生を変える」といったスローガンが書かれている。そのスローガンの前で工作機械を回したり、回路図に従って組み立てをしたりする学生の表情は明るい。

 実際、技術学院卒と大卒の就職事情と収入事情の逆転現象がいろいろなところで見られる。世界の工場になった中国にとっては、技能を持つ熟練工がいくらいても足りないくらいだ。安かろう悪かろうの商品で勝負してきた中国は、いまや品質と技術集約で勝負せざるを得なくなった。こうした社会環境の変化も、技能を持つ熟練工の大量育成を求めている。しかし、労働力の不足という要因もあり、その技能工の量産はなかなか市場ニーズを満たすことができない。自然と、企業はロボットを大量に使用する方向へ舵を切った。この現象は工作機械分野では特に顕著だ。

1
nextpage
特集 Biz.China 中国ビジネス最前線
ダイヤモンド・オンライン 関連記事

DOLSpecial

underline

話題の記事

莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり・・・中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」

⇒バックナンバー一覧