オスプレイ配備 なぜ佐賀か説明を尽くせ
唐突かつ重たい要請である。政府はまず地元に、筋の通った分かりやすい説明を尽くすべきだ。
政府は、自衛隊が導入予定の新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港(佐賀市)に配備する計画の受け入れを佐賀県に求めた。陸自目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)のヘリコプター50機も移す計画で、事実上の軍民共用化である。
さらに政府は、沖縄県の基地負担を軽減するため米軍普天間飛行場の同県名護市への移設実現まで米海兵隊オスプレイ部隊の訓練や拠点の移転も想定している。実現すれば、佐賀空港は日米同盟に基づく重要な最前線基地の一つと位置付けられよう。政府は8月末までに地元理解を得たいというが、そう簡単な話ではないはずだ。
古川康佐賀県知事は、県民が抱く疑問や不安を政府にただしていく姿勢を示した。当然の判断だ。
オスプレイは開発段階から事故やトラブルがあり、実戦配備後も安全性が懸念されている。この解消を政府は最優先にすべきだ。
次に、なぜ佐賀空港なのか。政府は長崎県佐世保市に新設される陸自の水陸機動団と佐賀空港配備のオスプレイとの一体運用を目指すという。だが、それだけで「佐賀空港がベスト」と断言できるのか。赤字が続く県営空港の活用策として浮かんだ側面はないのか。
佐賀県・市が軍事利用に否定的な見解を表明してきた経緯も見逃せない。地元に方針転換を迫るのなら、政府は空港の将来像をもっと具体的に語るべきだろう。
一方、気になるのが沖縄との関係だ。突然の政府要請と11月の沖縄県知事選を結び付ける見方もある。もし選挙絡みで沖縄の基地負担軽減に努力する姿をアピールする狙いが政府にあるとすれば、浅慮との批判は免れまい。過重な沖縄の負担軽減は確かに本土側が検討すべき課題だが、かといって一方的な押し付けは許されない。
九州は、軍事大国化する中国をにらみ、防衛の最前線として戦略上の重みを増しつつある。今回の政府要請も佐賀県だけでなく、九州全体の問題と受け止めたい。
=2014/07/24付 西日本新聞朝刊=