勉強会で、技術の多様性と自分の立ち位置を知る
この数年、Web系、オープンソース系のエンジニアの勉強会が盛り上がっていますね。この5月から6月にかけても、Go言語開発者の集まり「GoCon(Go Conference)」「渋谷java」「AWS勉強会」「GitHub Kaigi」とか。
僕もいろいろと勉強会に参加していました。GitHub Kaigiは僕も主催者の一人でした。Twitterに書いただけなのに、申込み者が1000人とすごい人数が集まって驚きました。
これだけ勉強会がブームになると、中には勉強会に行くこと自体が目的になっている人もいなくはないでしょうね。それについていろいろ考えていましたが、一周くらいして、動機はなんであれ、それでいいと僕は思うようになりました。
勉強会に行ったからといって必ずしも技術が身に付くわけじゃない。それでも、コミュニティに参加したいとか、世の中のトレンドを感じる場所としては勉強会は悪くないと思います。
前々回のGitHubを知っているかどうかという話でも触れたけれど、ITやWebの世界には、集団によってカルチャーギャップがある。普段仕事で一緒にいる仲間とか、そういう周囲の人間はギャップの内側にいる人間です。ギャップの内側にいる人は、似たような価値観と環境のことしか知らないから、そこにギャップが存在することにすら気づいていない。
そういう人たちが、勉強会とかを通じてギャップの外側に顔を出すことで、世の中のスピード感や盛り上がり感、逆に自分たちのテクノロジーや開発環境の立ち位置というのを、肌感覚でわかると思うんです。自分たちのやり方が時代遅れになってると感じるときもあれば、自分たちのやり方が進んでると思うこともあるでしょう。
もちろん、どんな新しいテクノロジーがあるかは、ググればわかることですけれど、「ああ、ここがいま盛り上がってるんだな、ホットスポットになっているんだな」ってことは、やはり実際にエンジニアたちが集まる場所に行って、その空気を感じて初めてわかるみたいなところがありますから。
僕自身は、単に勉強したいから顔を出す勉強会っていうのは最近は少ないですね。勉強会やるんだったら、やはり主催者とかスピーカーとか、もう少し深くコミットしたい。人の話を黙って聞いているのが苦手な性分なので、楽しめるように、参加者側に回るようにしてます。
他にそれをやる人がいればいいんだけれど、誰も手を挙げないなら自分がやっちゃうこともありますね。GitHub Kaigiなどはその一つでした。
最近は東京以外でも勉強会が盛んになりましたが、やはりその数や多様性という意味では東京なんでしょうね。地方で開発することも悪くはないし、僕が「はてな」時代に京都に一時行ったのも、静謐な環境で仕事をしたいということがあって。
それはそれで自分の感覚が研ぎ澄まされてよかったけど、結局、東京に戻ってきた。どちらがいい悪いじゃなくて、東京には多様性という意味での風が吹いているという事実、これは否めないです。
エンジニアは英語を勉強したほうがいい?
エンジニアがグローバルに活躍する時代です。やはり英語は必須だと思います。僕はそれほど得意とは言えないんだけど。困ったもんですね。
「エンジニアはコードを見るだけで、理解し合える」と言いますが、それがもしほんとだったら、リアルにしてもリモートにしても、顔を突き合わせての会議なんて必要ないですからね。
KAIZENにも日本語喋れないスタッフがいるので、なるべく全体会議は英語でやるようにしています。英語が重要なのは、海外の人とコラボレーションして、世界の多様性に触れることができるから。
そして、自分の発想や技術を日本というローカルなコンテキストに限定することなく、広げることができる。それにつきますね。僕ももっと英語、ちゃんとやらないとなと思ってます。
Chefを題材に電子書籍と紙の本で出版して気づいたこと
本の話になるのですが、昨年『入門Chef Solo – Infrastructure as Code』(達人出版会・単著)を電子書籍で出版しました。電子書籍を作ってみたかっというのが動機で、Chefはたまたまの題材に過ぎなかったんですけどね。それがきっかけで、紙の本(『Chef実践入門 コードによるインフラ構成の自動化』技術評論社・共著)も出してます。
紙の本は書店というチャネルに限られますが、電子書籍はロングテールで売れ続ける可能性があります。
ただ、紙の本は出版社がマーケティングやセールスを頑張っていただけるけど、電子書籍は自分でそれをやらないといけない。そういう違いを感じます。
書籍にまとめると、いい加減なことを書けないから、自分の頭の整理がつくという効用はあると思います。
「みんなが」ではなく「誰が」その話題をしているのかが重要
一方で、ブログも僕の考えを伝えるメディアとしては重要なものです。もう10年以上書き続けています。
なぜ書き続けるのかとよく聞かれるんですけど、やはり、自分が考えていることを誰かに認めて欲しいという「承認欲求」が、僕の中にあるんじゃないかなあと思います。
僕のブログを見て、取材に来てくれたり、話題にしてくれたりすると、素直に嬉しいですからね。
ブログといえど、それを書くときは一定の時間をそこに集中しなくちゃいけません。最初は苦しいけど、だんだん「ライターズ・ハイ」っていうんですかね、アドレナリンが出まくる、昂揚した気分を味わえるようになるんですね。
これって、プログラミングの時もそうで、今日はエディタを起ち上げるのもいやだなと思う日でも、コーディングが進むうちに、だんだんハイになってくる。
「ハッカーズ・ハイ」。「今日はこんなに書いた。さっ、気持ちよく飲みに行こう」みたいな(笑)。これを味わいたいというのも、ブログを書き続ける理由の一つかもしれません。
ブログのネタはどうやって探しているかというと、わざわざネタを探すというのはあまりしないですね。ただ、僕なりのツールはありますね。「HBFav」というはてなブックマークでフォローしている人の書きこみを見るiOSのアプリなんですけど。自分で作ったんですけどね。
これを毎日眺めていると、自然に技術的な文書が集まってくるので、そこから書きたいことがが浮かんでくることも多いですね。
なんでこのアプリを使ってるか。僕にとっては、みんなが面白いといってる記事より、この人はって思う特定の誰かが興味を持っている記事の方が大事でですね。それを見つけるためのアプリなんです。
例えば、よく知らない人に「このイタリアン美味しいよ」って言われても本当かなと思うじゃないですか。でも、イタリアンが好きで食べ慣れてて、お店にも詳しい人に言われると、「今度、行ってみようかな」って気になる。
つまり、みんなが話題にしているからじゃなくて、僕が興味を持っている誰かがブックマークしているから、ということが重要なんです。
例えば、テスト駆動開発の和田卓人さん。彼のブックマークもフォローしているんですが、和田さんの関心を呼び起こしたテストに関する話題だったら、ちょっと僕も読んでみようという気になります。
単にニュースを見るのだけではなく、「誰が」そのニュースに関心を持っているのか、ということのほうが大切。みんながいいということと、自分も面白いと思えるかどうかは別の話なんですよ。だからニュースリコメンド系アプリはあんまり僕の肌には合わないんです。
ちなみに、この「HBFav」。一度、Masuup Awardsに応募したことがあるのですが、見事、予選で落ちちゃいました(笑)。
若手の人の登竜門みたいなアワードに僕みたいなベテランが応募して、ひょっとして受賞したら話題になって面白いかなとおもって、いたずら心で応募してみたんですが、やっぱりだめでしたね(笑)。
Webの世界には処理しきれないほど情報があふれているけれど、すべてが自分にとって価値あるものとは限らない。玉石混淆の中からどうやって光るものをつかむのか。単にニュースを眺めるのではなく、「誰が」そのニュースに関心をもっているのかということをポイントに情報を選ぶといいと僕は思ってます。
その意味では情報の価値というのは、人と人のソーシャルな関係・文脈の中にしか存在しないとも言えるんです。そうやって自分の情報判断力をたえず研ぎ澄ませることが、僕にとっては大切なんじゃないかと思っています。
伊藤直也が語る「仕事の流儀」 記事一覧
第1回「KAIZENでの開発体制をKAIZENする」
第2回「スタートアップ企業にリモートワークツールを推奨する理由」
第3回「OSSプロジェクトのように組織をつくる」
伊藤 直也氏
ニフティ、はてな取締役CTO、グリー統括部長を経てフリーランスとして活動。ブログやソーシャルブックマークなど10年間、ソーシャルメディアの開発と運営に携わる。
著書に『入門Chef Solo』(達人出版会)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』 (技術評論社) など多数。2013年9月よりKAIZEN platfrom Inc. 技術顧問。
GitHub:@naoya
Twitter:@naoya_ito
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