マレーシア機撃墜:米が「ロシア関与」情報流す 露へ圧力
毎日新聞 2014年07月23日 20時15分(最終更新 07月23日 22時13分)
【ワシントン和田浩明】ウクライナ危機が長期化する中で発生したマレーシア航空機撃墜事件で、オバマ政権はロシアに圧力をかける好機と捉え、積極的に「ロシア関与」を示す情報を流している。犠牲者の多かった欧州諸国にも対露強硬姿勢を呼びかけて、ロシアの戦略的方向転換を促そうと躍起だ。ただ、情報の質には疑問が出ているほか、ロシアは対抗姿勢を崩しておらず、米国の目的達成は容易ではない情勢だ。
米情報当局は22日、事件に関して収集した情報と分析内容を伝える異例のブリーフィングを実施。ウクライナ東部を支配する親ロシア派武装勢力による「ミサイル誤射説」を打ち出した。20日にはケリー米国務長官が米主要テレビの番組に相次いで登場し、マレーシア機事件について説明。撃墜に使用されたとされるロシア製地対空ミサイル「ブク」がマレーシア機を撃墜した際の発射時を捉えた映像の存在を明かした。また、親露派支配地域とされる発射地点やミサイルの弾道を把握していると説明し、「確度の高い情報だ」と明言した。
米主要メディアによると、こうした情報は機密に属し、軍事衛星などで収集したと見られる。ケリー氏のような政府高官が米国の情報収集能力が分かるような形で、情報を公表するのは異例だ。機密情報の存在を明かしてまで、親露派とロシアの関与を米国内外で印象づける意図が明確だ。こうした「情報戦」も奏功してか、CNN世論調査では米国民の8割が「ロシア関与説」を支持した。
情報戦を展開するオバマ大統領は21日、声明で、プーチン大統領に現状が続けば国際社会での孤立と「対価」を払うことになると圧力をかけ、追加制裁を示唆した。
対露制裁では、積極的な米国と、エネルギーなどをロシアに依存するため消極的な欧州との温度差が縮まっていない。オバマ氏は18日の会見で「欧州は覚醒する時だ」と語り、対露圧力を高めるべきだとの考えを強調。22日の欧州連合(EU)外相会議が追加制裁準備の加速を決めると、即座に「歓迎」の意を表明して欧州の背中を押した。