ニホンウナギの絶滅危惧種指定、スーパーや外食企業は神経とがらせる
オルタナ 7月22日(火)13時25分配信
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ニホンウナギがレッドリスト入りとなり、危機に立たされているウナギ市場。一方で、ウナギ特有の流通事情もあることがわかった |
今年の「土用丑の日」に当たる7月29日を前に、スーパーや外食企業の仕入れ担当者が神経をとがらせている。国際自然保護連合(IUCN)が、ニホンウナギを絶滅の恐れがある野生生物を指定する最新版の「レッドリスト」に加えたからだ。すぐに輸入・販売ができなくなるわけではないが、ウナギの種類によっては取り扱い自体をNGOや海外から批判されかねない。(オルタナ編集部=佐藤理来)
■世界の70%を日本が消費
日本は世界のウナギ消費量の7割を占めるとされる。専門家によると、その7割はスーパーやコンビニ弁当、外食チェーンなどの大手流通に乗る。つまり、世界のウナギ消費量の約半数を日本の大手流通が占める計算だ。
今回、ニホンウナギはレッドリストで「絶滅危惧IB類」に指定された。絶滅危惧種の3区分のうち危険度で上から2番目だ。3区分とは「絶滅危惧IA類」(CR=ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)、絶滅危惧IB類(EN=近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)、絶滅危惧II類 (VU=絶滅の危険が増大している種)を指す。
ちなみにホッキョクグマは、3区分のうち絶滅危惧II類に指定されている。地球温暖化による動植物被害の象徴であるホッキョクグマよりも、ニホンウナギの方が絶滅の危惧度は高いと判定されたのだ。
今回の「レッドリスト入り」には法的拘束力はないものの、2016年に予定されているワシントン条約締結国会議で規制対象になれば、商業目的の国際取引や公海でのニホンウナギの水揚げが規制されたり、禁止になったりする可能性がある。
そもそも日本で流通しているウナギは、ニホンウナギ(日本・朝鮮半島など東アジアに分布)、ヨーロッパウナギ(主に欧州に分布)、アメリカウナギ(大西洋に分布)、ビカーラウナギ(東南アジアに分布)の4種類。いずれも資源の減少が指摘されている。
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各社の回答とDNA調査結果をまとめたもの。イトーヨーカドーでは輸入ウナギの販売が確認できず、今回の調査では「データなし」となっている |
ヨーロッパウナギは2008年にIUCN「絶滅危惧IA類」に、2009年にはワシントン条約付属書II類に指定され、すでに国際取引の規制対象になっている。
日本で流通するウナギの99%は養殖で、天然ものは1%に過ぎない。ウナギの場合、養殖のためには天然の稚魚(シラスウナギ)の捕獲が必要だ。ニホンウナギの稚魚の漁獲量は、1960年代のピーク時(年間約230トン)から、2010年にはおよそ7分の1にまで下がった(独立行政法人水産総合研究センター調べ)。
漁獲量減少の原因は、潮流変化や開発などによる環境変化、消費量の増加が指摘されているが、要因は複合的であるため特定は難しい。
■DNA判定が波紋呼ぶ
そんな中、環境NGOのグリーンピース・ジャパンの調査が波紋を投げかけた。同団体は今年5月から、店頭で売られているウナギの実態調査を行ってきた(調査対象は、イズミヤ、フジ、アークス、イズミ、マルエツ、ヨークベニマル、イオン、オークワ、西友、ダイエー、バロー、平和堂、ユニー、ライフ、イトーヨーカドーの15社)。
同団体は、各社にウナギの品種を問うアンケートを実施するとともに、店頭で購入した輸入ウナギの品種調査を行った。第三者機関であるビジョンバイオ(福岡県久留米市)が、14社17商品のサンプルをDNA分析し、アンケートの回答と照合した。
その結果、4社4商品で、企業の回答とDNA分析結果の不一致が確認された。そのうち、イズミ(広島市)がアメリカウナギとして販売していたウナギが、実はヨーロッパウナギだったことが判明したのだ。
最終更新:7月22日(火)13時25分
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