岐阜県大垣市での風力発電施設建設をめぐり、同県警大垣署が事業者の中部電力子会社「シーテック」(名古屋市)に、反対住民の過去の活動や関係のない市民運動家、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言したうえ、学歴または病歴、年齢など計6人の個人情報を漏らしていた。朝日新聞が入手した同社の内部文書でわかった。地方公務員法(守秘義務)違反にあたる可能性もある。

 シーテックは大垣市上石津町と同県関ケ原町に16基、最大出力4万8千キロワットの風力発電施設の建設を計画。低周波による健康被害などを心配した上石津町の上鍛治屋地区(46戸)は2月、測量に伴う同社の立ち入り反対を決めた。

 朝日新聞が入手したのは、同社地域対応グループと大垣署警備課長らとの協議内容をまとめた「議事録」で、2013年8月7日、14年2月4日、5月26日、6月30日の4回分。

 最初の13年8月7日付によると、中部電岐阜支店から「大垣署が事業概要の情報を必要としている」と連絡があり、同グループ長らが署を訪れた。同署警備課は、一部の反対住民を「自然に手を入れる行為自体に反対する人物」とし、大垣市在住でダム反対などの運動家・近藤ゆり子さん(65)や、妻が共産党市議の弁護士らが所属する同市内の法律事務所「ぎふコラボ」との連携を心配していることを示した。

 「大々的な市民運動へ展開すると事業も進まない」「平穏な大垣市を維持したい」などとして、今後の情報交換を依頼。その際、近藤さんについて、年齢や最終学歴などを伝えた。その後も「ぎふコラボ」事務局長の名前を教え、「病気で、次の行動が取りにくい」(5月26日付)などと教えていた。

 シーテックの加藤広・地域対応グループ長は議事録の作成を認め、警察情報について「いろんなことを知っていた方が良い」、大垣署の牧村康弘副署長は「ノーコメント。治安のため情報を集め、共有することはある」と話した。(編集委員・伊藤智章、渋井玄人)