2014年07月23日

15分間の罵倒

今日の早朝勤務の時。
宅配便のゴルフ便の依頼にいらしたお客さまがいた。

この方は私のお父さんぐらいの年齢の男性で、それなりにいい会社のサラリーマン、っていう感じ。
しょっちゅうゴルフ便を利用する方で、それ以外のお買いものはしてくださったことは一度もなくて。
うちのお店を、宅配便の窓口代わりに利用されてる方なのね。

いつも来店されると、レジに並ばないでレジカウンターの横にバッグを置いて、従業員がほかのお客さまの対応してても、その場所から
「おい」
って呼びつける方。
すぐに応じないと(レジ応対中だとすぐに行けないから)、なんども、
「おい!おいっ!」
って怒鳴り続ける。

やっと手をあけて慌てて、
「ゴルフ便ですね」
って伝票を渡すと、
「いつまで待たせんだ」
って、唸るよーに怒る方。

見た目は重役みたいな紳士、って感じなのに、ちょっとそーいう横柄なとこがある方。

だから従業員はみんな、その方が来店するとレジから逃げちゃって、だれかに応対させよーとする。
いつもゴルフ便なのに、バッグの中の本数確認も毎回快く応じていただけなくて(これは宅配便会社からきびしく言われてる決まりなのに)、確認してる従業員のそばでぼそぼそ罵り続けるのね。
100%の確率で応対した従業員がイヤな気分になっちゃう方なので、みんなできれば自分が応対したくない、って気分になってる。

(お客さまの悪い話はあまり書かないよーにしてたんだけど、たまにいろいろすごい方がいて、トラブルになっちゃったこととかこーいう事実もこの仕事にはあるよー、っていう意味で、支障のない範囲で書ける話は書いていこーと思ってます)

私がいる時は私ができるだけ応対してたんだけど。
やっぱり私もなんかモヤモヤした気分になることは多かったんだけど。

今朝はたまたま新人のレジがあいてるタイミングで、そのお客さまの応対をしてた。
私は自分のレジで接客中で。
そしたらとなりのレジから呼ばれた。

私はまだ手が離せなかったから、返事だけしてすぐに動けなかったら、
「おいっ!こっちが呼んでんだ!」
って、ゴルフ便のお客さまから怒鳴られた。
私も目の前のお客さまの光熱費の支払いの応対中だったのに。

「はい。申し訳ありませんがもう少々お待ちください」
ってお返事したら、
「おい。こいつがわからないって言うんだからわかる奴が早く来い」
って、また怒鳴られた。

私が応対してたお客さまがびっくりした顔して、
「あっちやってあげて。こっちはいいから」
って言ってくださって。
それで、
「申し訳ありません」
ってお詫びして、少しだけレジを離れさせていただいた。

そしたら希望のプレイ日をレジに打ち込んだ新人が、
「この日のお届けでいーんですか?」
って聞いてきた。
レジで表示された「可能お届け日」はプレイ希望日の日付からになってたからねー。

「前日に届いていたほーがよろしいですよね?」
って私がお客さまに確認したら、
「あたりまえだ」
って言われて。
ゴルフとか旅行バッグのお届けは基本、お客さまのご利用日の前日着だからねー。

だから、
「申し訳ありませんが、今お預かりしますとプレイ日前日のお届けは間に合わないみたいです」
って私が説明した。
レジが受け付けれる日しか設定ボタンが表示されない仕様になってるから、任意で打ちこめないんだよねー。

でもお客さまは、
「今日預けてそんなことはない。前日指定で打ち込めばいーだろ」
って、怒った声でおっしゃってきたので、私がレジで設定できないことは従業員の判断でできないことを丁寧に説明した。

そしたらレジがダメなら宅配便の人に直接言え、っておっしゃられたので、それも不可能なことをお詫びの言葉を添えて説明した。

まだ宅配便の受付に慣れてない新人が、
「ダメなんですか?聞いてみるだけ聞いてあげたら」
なんて私に言ってきたので、お客さまは、
「そうだ。聞くだけ聞けよ。今、問い合わせてこい」
って更にお怒りになって。

だから私が新人に、
「レジで通らないことはお引き受けできないの。宅配便のほーで断られるの」
って教えて、お客さまには、レジシステムで通らないオーダーはこーいうお店の店頭で従業員判断で引き受けないよーに宅配便の会社からきびしく言われてることを説明した。

ほんとに従業員の判断で引き受けちゃうと、ものすごい怒られるし、集荷を断られたこともあるんだよね。
そーなると、預けたお客さまにお荷物をお返しする際に、お客さまと店舗の間でものすごいトラブル事例になっちゃう。
レジは宅配便を受け付ける作業しかできなくて、なんの裁量の権限はない。
お客さまのこまやかなオーダーにおこたえできないし、少しでも規定から外れたり伝票の書き方のミスひとつで宅配便の人は店員をものすごい怒る。

宅配便お預かりサービスは、レジの従業員ってお客さまと宅配便会社、どっちからも怒られる、なんて板挟み状態になるのがわりとしょっちゅうで、現場の人間にはやりにくい業務のひとつだよねー。

とにかくお客さまの希望のプレイ日の前日お届けは受けれない状態だったから、それをわかっていただけるまで説明してお詫びを繰り返すしかなかった。

新人の人に私が応対してた光熱費支払いのお客さまの接客を頼んで。
そっちのレジがあいても、ゴルフ便のお客さまからはまだ、前日に届けろ、とごねられてた。
それを見かねた新人が、
「私、宅配便に電話して聞いてみます」
って言い出しちゃって。

その時間帯はそれがムリだし、レジシステムで不可能なことは現場で軽々しくお引き受けできない原則を新人にはちゃんとわかってもらう必要がある。
それをお客さまの前でさらっと言っても、新人はそれを理解してくれなくて、
「なんとかならないんですか?ほかの宅急便だともっと早いですよねー」
とか言い出しちゃうし。

だからお客さまも、
「他社はもっとはやいんだから、お宅もできるはずだ」
「なんとかしてみろ。いままではいつも前日に届けてたのになんで今回だけダメなんだ。そんなことあり得ないだろ」
って、ぜったい納得してくださらなくなった。

私はしょーがないから、新人をその場から離れさせた。
余計なことを言うから、お客さまが納得できなくなっちゃうんだと思って。

それで私があらためて、今回のケースはうちの店頭でお客さまの希望通りのお引き受けがレジのシステム上できないことを説明した。
どーしても前日には届けれないことがわかったお客さまは、そこで納得はしてくださらなかった。

重いバッグをここまで持ってきた、っていう自分の負担もあると思うし、レジが駄目だから、っていう言い訳を理解してくださらないお客さまはほかにもいろいろいるしねー。
従業員や店長の裁量を要求されるんだけど、それができないガチガチのシステム縛りになっちゃってるから店側もつらいんだよねー。

お客さまの苛立ちはものすごいわかる気がしたけど。
でもほんとにものすごい苛立ちを暴発させちゃったそのお客さまは、それから15分ぐらい、ものすごい罵倒を私に浴びせてきた。
そのあいだに来店されたお客さまが何人もいて、「なにごと?」ってびっくりして見てて。
レジも混んできたから2台あける必要があったのに、
「カウンターの中から出てきて目の前で話を聞け」
って言われたから、私はカウンターの外に出てた。

その間、私がほかのお客さまを気にして振り向いたりすると、腕つかまれて、
「こっち見てろ。よそ見するな」
って怒られて。

もっと毅然とした態度でこーいうクレームを拒絶できたのかもしれないけど、ものすごい感情的になっちゃったお客さまを目の前にしてて、この方はほんとはシステム上どーしよーもならないことはわかったけど、気持ちのおさまりがつかなくなっちゃって八つ当たりしてるだけかなー、って思って。

モンスタークレーマーは、はげしいクレームのあとになにかを店に要求することがほとんど。
土下座にひとしい謝罪とか、金銭的な謝罪とか。
でもこのお客さまは、私にはもう謝罪も要求しないし、店長出せとも言わないし、ゴルフ便を断られたこととはぜんぜん関係ない罵倒の言葉を吐きつづけだしてた。

バカヤロウ!
とか。
オマエハキャクヲバカニシテルノカ!
とか。
キャクノイウコトキケナイナラコンナシゴトヤメチマエ!
とか。

それからほんとにいろいろ。
おもいつく限りの、汚い言葉を選んで、それだけをものすごい勢いで私に唾飛ばしながら吐きだし続けて。





私はそのあいだ、
「はい、はい」
って、ひとつひとつ真顔で頷きながら聞いてた。
要求はぜんぜんない罵倒がずっと続いて。
それで、いったんは気が済んだのか、
「おまえみたいな若い女に言ってもしょーがない」
って、吐き捨てて。

「こっちはこんな重いもんわざわざ持ってきたのに」
って、ぶつぶつ言いだして。

「ご要望通りにお受けできなくて申し訳ありませんでした」
って、そこで私がもういちど頭さげてお詫びしたら、
「まあ、お宅じゃどーしよーもねーんだろ。それはわかったから」
って、言って、
「よそで出す」
って、バッグ持って帰っていかれた。

あー、気が済んだのかなー。
って、私はなんとなくそこでほっとしたんだよね。

ツイートしたけど、罵倒って自分がすっきりするためにやることだとも思うから。

唾や痰を吐くみたいに、言葉の中でもどろどろに汚い言葉を選んで、それだけペッペッて吐き飛ばすのが罵倒だよね。

ほんとにそのお客さまは、どろどろした言葉だけを選んで、それだけ吐きつづけてた。
たぶん、その人も普段はそんな言葉、かんたんに口にしないんだと思う。
いつも横柄な態度で、いろいろぼそぼそ罵ってくることはあったけど、ものすごい汚い言葉までは使ったことなかったし。

私がそれを浴びせられても心がこわれなかったのは、それは私っていう人格のために選ばれた罵倒じゃなくて、「従業員」っていう記号に向けられた罵倒だったからねー。

ものすごい罵倒を続けたお客さまが、それをストップさせた時には、うちの店舗のせいじゃないっていうのを理解してくださった納得の言葉を口になさったしねー。

なんか自分で納得つけてくださったのかなー、って感じたから、私もなんかほっとした。

今朝の私の対応がよかったとは思わないけど。
ほかの従業員がやられてたかもしれないからねー。

私はこーいう時、なにが正解なのか、まだわかんない。
でも、あれだけものすごい罵倒のあとで、なんかすっきりして帰ってくださればいーなー、って思ったのは私のほんとの気持ち。

【日常の最新記事】
posted by luv at 20:27| ブリスベン | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする