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【社説】

政府経済見通し 消費増税は無理筋だ

 政府が経済見通しで示した二〇一四年度の成長率1・2%は民間予測を大幅に上回り、甘すぎる。現状は消費や設備投資など民需が総崩れ状態である。年末に決める消費税再引き上げは無理筋だ。

 政府の経済見通しは、経済財政運営の「目標」としての意味合いがあるとはいえ、楽観的すぎるのではないか。これでは消費税増税の決定に向けた地ならしかと勘繰られても仕方あるまい。

 政府は、昨年十二月時点では一四年度の国内総生産(GDP)成長率を、物価の影響を除いた実質で1・4%程度としていた。今回は消費税増税後の個人消費の落ち込みや輸出の伸び悩みを踏まえ1・2%程度に下方修正した。

 しかし、それでも民間エコノミストの予測平均0・85%とは大きく開き、政府見通しの甘さを指摘する声は強い。

 最近の経済指標を前回消費税増税があった一九九七年時と比べると、完全失業率・有効求人倍率を除いて軒並み悪いのである。GDPの六割を占める個人消費は、総務省の五月の家計調査でみれば前年同期比8・0%減と激減した。増税前の駆け込み需要、その反動減はともに九七年時より大きい。

 設備投資は四、五月と二カ月続けて大きく落ち込み、設備投資の先行指標の機械受注が五月に前月比19・5%減であることから、先行きも期待できない状況だ。

 何より賃金が物価上昇に追いつかない。安倍晋三首相は賃上げや賞与の上昇をことさら喧伝(けんでん)するが、消費税増税に伴う物価上昇やガソリン代、電気代、外食の値上げで実質賃金は大きくマイナスだ。政府は消費税の影響ばかりに焦点を当てるが、それ以外にも国民の負担増がいくつも始まっているのを誤魔化(ごまか)してもらっては困る。

 七十〜七十四歳の医療費自己負担の引き上げや公的年金の給付額1%カット、復興支援のための住民税上乗せ年一律千円。厚生年金保険料は十月と来年十月に引き上げられ、年金は来年四月にもさらに0・5%カットである。

 政府は今春の消費税8%への引き上げ時に巨額の補正予算を組み、右手で増税しながら左手でバラまくというでたらめの財政政策をとった。

 今回も十月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しと称し、国民の年金資金で株価つり上げ策を図るなど、何でもありだろう。こんな理不尽な対策を必要とする消費税増税なら最初からやらなければいい。

 

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