旅客機への攻撃は断じて許されない。世界の空の安全を保障するためにも、国際社会は原因を徹底追究すべきである。

 ウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜された事件をめぐり、国連安全保障理事会が非難の決議をした。

 国際調査団による無制限の立ち入りを現地の武装勢力が認めるよう要求している。

 近年の安保理は米欧対ロシア・中国のかたちで分裂することが多かったが、今回は一致した国際世論を明示できた。せめてもの前進といえる。

 疑惑の渦中にある常任理事国のロシアも賛成せざるを得なかった。ならば、積極的に疑問に答え、自ら検証に踏み出して、真実を明らかにすべきだ。

 事件の調査は難航している。現場の一帯を支配する親ロシア派の武装勢力が撃墜にかかわった疑いが濃厚だが、これほどの悲劇をへてもなお彼らは無法な行動が目立つ。

 発生直後、欧州安保協力機構(OSCE)の監視団を妨げたり、遺体や残骸の一部などを勝手に運び出したりした。

 ようやくきのう、墜落機の飛行情報を収めたブラックボックスの引き渡しなどに応じたが、これまで証拠隠滅とみられかねない動きを続けてきた。

 そうした振る舞いがかき立てる国際社会の怒りは、武装勢力だけでなく、その背後にいるロシアにも向けられている。

 その現実をプーチン大統領は重く受けとめてもらいたい。

 米政府は、撃墜は武装勢力によるとの見方を強め、ミサイルはロシアから運ばれていたと明言している。その疑いを強める情報は相次いでいる。

 事件直後に武装勢力が撃墜を確認したとされる会話の交信記録や、事件に使われたあとのミサイルがロシア領に運ばれるところとされる写真など、いずれも注目に値するものだ。

 ロシア国防省は逆にウクライナ側が撃墜した可能性を示唆しているが、その疑いを抱かせるような具体的情報は乏しい。

 このまま、事実をうやむやにしかねない態度を続けるなら、そのつけは自身にはね返る。

 これまで欧州連合(EU)は米国に比べてロシアへの制裁に慎重だった。天然ガスの取引など経済に配慮してのことだったが、多数の犠牲者を出した欧州の世論も硬化し始めている。

 クリミア半島の併合だけでなく、プーチン氏はウクライナ東部でも自国の権益を押し通そうとしてきた。だが、その強硬策はロシア自身を深い孤立に陥れることを悟るべきだ。