Financial Times

香港の自由に扉を閉ざす英国

2014.07.23(水)  Financial Times

(2014年7月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

陳方安生氏と李柱銘氏は7月半ばにロンドンにいた。香港の自由と法の支配のために長年戦ってきた両氏は、香港が1997年に英国から中国の統治に移った「共同声明」を守ることに対する精神的支援を期待していた。ところが彼らは、先祖伝来の邸宅に押し入ろうとする道楽者の遠い親戚のように迎えられた。

 香港の元政務司司長の陳方氏と著名な弁護士兼政治家の李氏が少し前にワシントンを訪れた時は、米国のジョー・バイデン副大統領に迎えられた。ジョン・ケリー国務長官はワシントンを離れていたが、米国務省は真剣に話を聞く機会を設けた。

中国政府に配慮し、香港の活動家との面会を拒否

 これに対し、デビッド・キャメロン英首相の官邸は、陳方、李両氏はロンドンで外務省の中堅幹部より上の高官に会うべきではないと判断した。対話は何の成果ももたらさなかった。

 幸い、保守党が主導する連立政権でキャメロン首相の副官を務める自由民主党のニック・クレッグ氏は主体性を持っており、どうにかこの2人の活動家と面会した。だが、首相官邸は中国政府に意図した通りのメッセージを送っていた。中国政府が香港の統治に対する支配力を強めていることに関する論争で、英国はどちらの側にもつかないから中国は安心していい、という趣旨である。

 英外務省は、中国が過去の保証を薄めていることに対する「評論家」数人の懸念に言及するにとどめた。

返還から10年、変容する香港

英国による156年間の統治の終わりを告げた1997年7月1日の返還式典で、掲揚の前に国旗を運ぶ中国兵士(左から2番目)。右側は行進する英国兵士〔AFPBB News

 状況は様変わりした。陳方氏と李氏が数年前にロンドンを訪れた時は、キャメロン氏本人に丁重に迎えられた。両氏はこの時、保守党は香港の権利と自由を断固として守ると保証された。

 何しろ、鄧小平氏と返還について合意した時に、1つの中国は2つの政治制度を持たなければならないと主張したのは、保守党出身のマーガレット・サッチャー氏だった。

 あれは、キャメロン氏が首相になる前のことだった。さらに言えば、キャメロン氏が向こう見ずにもチベットの精神的指導者ダライ・ラマと会った後に中国政府が見せしめに2国間関係を凍結する前のことだった。

 キャメロン首相は屈服し、昨年、貿易使節団を率いて北京を訪問した際、中国の習近平国家主席に敬意を表した。

 7月半ばにロンドン官庁街に広がったメッセージは、キ…
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