精神疾患で1年以上入院している人が、全国で20万人いる。6万5千人は10年以上の入院だ。入院治療の必要性が低い「社会的入院」も多い。OECD(経済協力開発機構)の統計で、日本の精神病床数は人口あたりで加盟国平均の4倍に及ぶ。

 「入院医療中心から地域生活中心へ」。国が精神障害者施策で、この方針を打ち出してからほぼ10年が経つ。それでも、なかなか進んでいないのが実情だ。流れを確かなものにしなければならない。

 「地域へ」の具体策を検討していた厚生労働省の有識者会議が報告書を公表した。新たな入院は原則1年未満とすること、地域生活のサポート体制の充実などが盛り込まれた。

 議論の焦点は、「病院のベッドを減らす場合、病院敷地内へのグループホーム設置を認めるか否か」だった。最終的には容認されたが、入居の際には複数の選択肢から本人が自分の意思で選べる、外出や外部からの訪問は自由、入居期間を区切る、といったことが前提とされた。

 退院しても病院の敷地内に住むのと地域に住むのとは違う。

 最優先すべきは、退院した人が地域に戻って生活できるようにする支援の充実だ。ただ、長期入院の結果、すぐ地域に戻ることに不安を感じる人もいる。グループホームを「仮住まい」として設置できる余地はあってよいだろう。

 しかし、この「仮住まい」はあくまでも例外であり、限定的に利用されるべきものだ。大前提である本人の選択による入居かどうかを確認したうえで、第三者が常に状況をチェックする仕組みも欠かせない。

 報告書に基づき、厚労省は今後、グループホームへの転換を認める条件を具体的に定める。地域の住まいに移るステップとして機能するのか、あるいは、病院が敷地内に囲い込むだけの単なる看板の掛け替えに陥るのかは、その条件と運用にかかっている。

 グループホームへの転換については、障害者団体などが「退院後も病院が患者を抱え込むことになる」と反発し、福祉関係者の間でも意見は割れている。厚労省は、透明性を確保して丁寧に条件づくりを進める必要がある。

 退院者がグループホームに住みながら地域との交流を深めていけるか。その視点が欠かせない。地域の住まいに移るための支援が弱まるようでは本末転倒だ。弊害の大きさが明らかになったときは、やめるのをためらうべきではない。