各省庁がばらばらに許可していた旧公益法人は、天下りなど役所と法人の癒着を生み、「業界益」の温床になった。

 だから、民間人からなる第三者機関「公益認定等委員会」を設け、委員会が公益性を判断する仕組みに改めた。

 これが、昨年まで5年をかけた公益法人改革の概要である。

 制度を刷新し、NPO法人などとともに民間による公的活動を促す。多様な価値観の実現を後押しし、いきいきとした社会を作っていくのが狙いだ。

 そんな改革の今後に影響を与えかねない出来事があった。日本尊厳死協会の公益法人申請を認めなかった一件である。

 尊厳死協会は、「患者本人の意思を尊重した終末期医療の普及啓発」を掲げる。不治の病で末期を迎えた時の延命治療をあらかじめ断る「リビングウイル」(尊厳死の宣言書)の登録事業を展開し、患者の意向に沿った医師が責任を問われないよう法律作りを働きかけてきた。

 公益認定委の判断はこうだ。

 リビングウイルに従わせることは、医師を刑事・民事・行政上、不安定な立場に置きかねない。医師の免責を含む法制化の推進を「公益」と認めれば、国会より先に適否を判断することになりかねない……。

 会員12万人余の尊厳死協会の調査によると、13年に亡くなった会員の遺族の9割が「リビングウイルが生かされた」とする一方、医師の判断を巡る問題は特に生じていないという。

 議員立法による尊厳死の法制化を目指している超党派の議員連盟(約170人)も「公益認定されても審議に影響を及ぼすことはない」としている。

 一方、法制化にはさまざまな障害者の団体などが強く反対する。日本医師会や日本弁護士連合会も極めて慎重だ。意見が分かれる、難しい問題である。

 ただ、尊厳死への賛否と公益の認定は別の問題ではないか。

 認定委も「尊厳死問題の是非論や政策論で判断したのではない」「良識ある立法促進活動は民間団体として自由に活動しうる領域ではないか、との意見もあった」と述べている。

 国の認定委と、都道府県ごとの第三者機関が「不認定」とした例は10件余り。組織や経理など運営体制への不安、特定業界のための活動が中心で公益とは言えないといった理由が多く、尊厳死協会のケースは異例だ。

 賛否が対立するテーマだからこそ、双方の意見を尊重し、対話を通じて議論を深めていく。

 目指すべき「公益」について、改めて考えたい。