マンションの同じ階に二人暮らししていた老夫婦のおばあさんの方が亡くなって1年ほどになる
健康そうだったのだが、急に亡くなられた
残されたおじいさんは90歳くらいで、一人で暮らしている
洗濯物を干したり、ゴミを捨てる姿をたまに見かけるが、ほとんど家の中に閉じこもっている様子だ
一人息子は結婚し遠くで暮らしており、おじいさんも厄介になる気はないらしい
たぶん本当は一緒に暮らしたいのだろうが、意地や遠慮でとても言えないのだろう
ほんの1年前まで、妻と静かに暮らしていた
50年、60年前は、息子と三人で幸せの真っ只中にいた
なのに人生の最後は一人、希望もなく、ただ時が過ぎるのを待つだけ
三人で写ったあの頃の写真を見て、涙が止まらなくなり、息子に電話をかけようとする、その寸前で思いとどまる
もう何も話すようなことも無いのは分かっているから
そんなことを想像しながらいつも家の前を通り過ぎる
何が残酷かというと、おじいさんは特に間違ったことはしていない点だ
息子を立派に独り立ちさせ、妻とも仲睦まじく添い遂げた
それなのに、最後はこれだ