心がよろけそうなときに読むポンコツ日記

現在心の福祉職をとして考えることや日常のことなど徒然なるままに

Graduation from widow




母は死んだら旧姓の墓に入りたいと言う。

父とは別の墓だ。


薄情と思う人もいるかもしれないが、私はその母の思いを尊重したいと思っている。

母は所謂未亡人だ。父が亡くなってからずっと私と兄弟を女手ひとつで育ててくれた。最初は残業の多い仕事をしていた。私と兄弟は先に寝ることができずリビングで夜遅くまで待っていた。それを見兼ねた母が別の仕事を探してきた。定時であがれる土日祝日休みのお仕事。探すのにとても苦労したのだろうと思う。母は学のある人だったから、やりたい仕事もあったと思う。夫と共働きの生活だったらそれも叶ったかもしれない。でも母は私達子供を優先して働いてくれていた。



父が亡くなって5年くらい経つまでは母が男の人と話していると私は動揺した。夜出かける用事があれば必ず誰といくの?と聞いていた。仕事で男性職員と電話で話しているときも私は母から目を離さなかった。母が別の男性と再婚することは当時の私にとっては許されないことだった。



しかし時もだいぶ過ぎた今、母の今後の生活のことを考えるようになった。兄弟も私も家を出て、飼い犬も亡くなってひとりになったとき、母は改めて父の死と向き合うことになるのではないだろうか。そうしてひとり孤独を抱えることになるのかと思うとなんとも形容し難い思いだ。

20歳を過ぎたころ付き合っていた元彼は「お母さんは再婚しないの?」とよく私に尋ねてきた。それがとても腹立たしかった。「お前の母の面倒は見たくない」と言われているようで。そんなの当たり前だって自分もわかっているし、お前から一々聞かれる筋合いはないと思っていた。そして自分のなかでずっと保留にしてきた思いをほじくり返されるような感じがして嫌だったのだ。


私は子供だった。



母の友人には離婚や死別などで同じ境遇にあった人が多くいて、そこで楽しそうにしているのをみると安心する。老後もし病気にかかったとしても私が面倒みてあげられるくらいの経済的余裕はつくりたいと思ってる。

でも心の穴を埋めるのは私達では限界がある。大切な伴侶を失ったという大きな穴だ。



そんな母の旧姓の墓に入りたいという思いくらいは叶えてあげたいと思うのだ。だからその分私が独り身で亡くなったときは今の名字の墓に入れてくれて構わないよ。父をひとりにするのは心苦しいからね。


そしてもし母に新しい相手が見つかったら、私は笑顔でおめでとうって言うんだ。