ガザ:死者400人超える…戦闘激化、医療態勢は崩壊寸前

毎日新聞 2014年07月20日 21時02分(最終更新 07月21日 04時49分)

イスラエル軍の攻撃で負傷し、親族によって病院に運び込まれるパレスチナ人の男性=ガザ北部ベイトラヒアで2014年7月19日、AP
イスラエル軍の攻撃で負傷し、親族によって病院に運び込まれるパレスチナ人の男性=ガザ北部ベイトラヒアで2014年7月19日、AP
ガザ地区
ガザ地区

 【ガザ市(パレスチナ自治区)大治朋子】パレスチナ自治区ガザ地区北東部で20日、イスラエル軍の猛爆撃で少なくとも50人のパレスチナ人が死亡し、イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が本格化した今月8日以降の死者数は400人を超えた。ロイター通信などが伝えた。激しい攻撃が続く現場には救急隊も近づけず、数千人の住民が逃げ惑った。

 赤十字国際委員会の仲介で、イスラエルは20日午後1時半から2時間、ガザ北東部で停戦すると発表。同地から死傷者を搬出するためで、ハマス側も合意したが停戦はわずか1時間で破られた。

 17日深夜の地上戦開始後もイスラエルに対するハマスのロケット弾攻撃はやまず、イスラエル軍の攻撃も激しさを増している。市民の死傷者は急増。医師らが不眠不休で治療にあたっているが、輸血用の血液や麻酔が欠乏するなど、ガザの医療態勢は崩壊寸前だ。

 ガザ保健省によると、同地では8日以降の死者が400人を突破したほか、負傷者は2600人に上る。イスラエル側ではハマスのロケット弾攻撃で民間人2人、ガザでの交戦などで兵士5人が死亡している。

 「重傷者が続々と運び込まれているのに医師が足りない。輸血も麻酔もなくなりつつある」。ガザ市中心部のシファ病院で19日、オバイド医師(44)が疲れ切った様子で語った。ガザ最大の病院だが、輸血用の血液が大幅に不足。点滴器具や注射器など最低限必要な医療器具すら欠乏している。集中治療室は1室しかなく、「救える命を救えない」。

 保健省のケドラ氏は「今回の紛争前から(ヨルダン川西岸の)パレスチナ自治政府に医療品の支援を求めてきたが、何もしてくれなかった」と指摘。パレスチナ内部の問題も大きいと強調した。

 激しい戦闘が続くガザ北部ジャバリアのカマル・アドワン病院でエブラヒム副院長(47)が言った。「市民の大半は戦闘は無関係なのに、犠牲を払うのはいつも市民だ」

 イスラエル軍は「ハマスが民家や病院、学校を兵器の保管場所に使っているため、やむを得ず民間施設を攻撃している」と訴える。17日には、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校でロケット弾20発が発見された。ハマスなど武装組織が民間施設を「人間の盾」に使っているのは事実だ。

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