航空機撃墜:ロシアの影響力に限界 武装勢力の制御不能
毎日新聞 2014年07月20日 12時38分(最終更新 07月20日 12時52分)
マレーシア航空機撃墜の衝撃を受け、ロシア批判の国際世論が高まっている。地対空ミサイルを撃ったとされるのはウクライナ東部を支配する親ロシア派武装勢力だが、ロシアが完全に支配できない側面もある。今後、原因究明の調査や正常化へ向けた取り組みの支障となる可能性がある。【モスクワ田中洋之、ブリュッセル斎藤義彦、ワシントン和田浩明】
「武装集団を鎮めたり、降伏させたりすることをロシアにだけ求めるべきではない」。ロシアのラブロフ外相は18日、マレーシア航空機撃墜への関与が取りざたされている親露派についてそう語った。ロシアの影響力が限られていることをにじませた。
今年2月の政権崩壊に始まるウクライナ危機は、3月にロシア系住民が多数を占める南部クリミアがロシアに編入されたのに続き、4月に東部で分離独立を求める親露派住民が政府庁舎などを占拠して内戦状態となり、国の分断化が進んだ。クリミア編入の前に現地で目立ったのは、覆面姿の武装集団だった。プーチン露大統領は、当初、クリミアへのロシア軍の関与を否定していたが、4月になって「(親露派の)自衛部隊の後ろにはもちろんロシアの軍人たちが立っていた。(ウクライナからの独立を問う)住民投票を開かれた形で実施するためには他の手段はなかった」と述べ、軍の介入を初めて公式に認めた。
親露派を支援することで現地を不安定化させ、影響力の確保を狙うのは東部でも同じ。ドネツク州やルガンスク州にはロシア側から、覆面姿の義勇兵や武器が送り込まれ、背後には東部のロシア編入を掲げる民族主義組織も暗躍した。旧ユーゴスラビアやチェチェンの紛争に参加したロシア人、イーゴリ・ストレルコフ氏らロシアとの関係が深い武闘派が台頭していった。
ストレルコフ氏は、マレーシア航空機撃墜事件で、欧米メディアで「黒幕」として取り上げられた。17日の撃墜直後に「(親露派が)ウクライナの軍用機を撃墜した」とソーシャルメディア上で“勝利宣言”し、直後に削除した人物だ。