北朝鮮制裁:政府、一部解除を決定 拉致調査に実効性
毎日新聞 2014年07月03日 11時52分(最終更新 07月03日 13時43分)
政府は3日午前、北朝鮮との外務省局長級協議を受け、関係閣僚会議と国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開いた。拉致被害者らの再調査を行うために北朝鮮が設置した「特別調査委員会」の実効性は確保されたとみて、日本が独自に行っている制裁の一部を解除する方針を決めた。4日の閣議で正式に決定し、同日付で解除する。拉致の疑いが排除できない特定失踪者を含めた拉致被害者の安否が今後の焦点となる。
安倍晋三首相はNSC終了後、記者団に「日朝交渉の結果、拉致問題を含めてすべての日本人に対する調査が、国防委員会、国家安全保衛部といった国家的な決断、意思決定をできる組織が前面に出るかつてない体制ができたと判断した。行動対行動の原則に従って、日本が取ってきた一部の措置を解除する」と述べ、制裁の一部解除に踏み切ることを表明した。
首相はそのうえで、「しかし、これはスタートでしかない。全面的な解決に向けて、一層身を引き締めて全力で当たっていく決意だ」として北朝鮮の再調査を注視する考えを示した。
北朝鮮は1日の局長級協議で、特別調査委の責任者には金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の側近の国防委員会幹部が就き、国家安全保衛部、人民保安部などから30人程度が加わると伝えた。国防委員会は金第1書記がトップを務める最高軍事機関で、北朝鮮側は「特別調査委には全ての機関を調査することができる」特別な権限が付与されると説明。政府は特別調査委が実効性のある調査をできると判断した。
解除するのは日本が独自に行っている制裁で、(1)北朝鮮籍者や当局職員の入国禁止、北朝鮮への渡航自粛など人的往来の制限(2)北朝鮮への10万円超の現金持ち出しの届け出義務と300万円超の送金の報告義務(3)人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止−−の3分野。5月末の局長級協議で、特別調査委の調査開始時に3分野の制裁を解除することで合意していた。
北朝鮮は6月29日に日本海に向けて弾道ミサイルを発射したが、首相は自ら掲げる「拉致問題の全面解決」には調査を進展させることが欠かせないと判断し、制裁解除に踏み切った。