【ガザ市AFP=時事】イスラエル軍は16日未明、新たにパレスチナ自治区ガザに対する空爆を行い、医療関係者によると、3人が死亡した。これで、これまでのパレスチナ人犠牲者数は200人に達した。今回の軍事行動に至った直接のきっかけは、6月に起きたユダヤ系イスラエル人少年3人の誘拐・殺害事件です。イスラエル政府は事件の犯人をガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマス関係者と断定しており、軍事行動は少年殺害に対する報復を目的にしていました。過去にもイスラエルは自国民の誘拐・殺人に対しては報復を行っており、最近では2006年にレバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラによる兵士誘拐でも、イスラエル軍がレバノンに侵攻する事態となりました。
時事通信:ガザでの死者200人に=パレスチナ
しかし、イスラエルは小国と言えども、中東で最強の軍事力を持つ国家です。そのイスラエルが殺された少年3人の報復として、200人以上のパレスチナ人を殺害する事に、多くの人が嫌悪感を持たれている事でしょう。日本国内でもイスラエルを非難する論調の報道が多く見られます。その多くは、強大なイスラエルが市民を巻き添えにした空爆を行っている、と。しかし、イスラエルとハマスを内部事情から見ると、両者が共に追い詰められ、袋小路にハマっている現状が見えてきます。
政府より国民が強攻策を望むイスラエル
これまでの空爆に続き、18日にはガザ地区への地上侵攻が始まりました。この地上侵攻の目的として、イスラエル軍はガザ地区から掘られた地下トンネルの制圧を挙げています。ガザ地区はイスラエル軍により、従来から厳しい検問が敷かれており、地下トンネルは生活物資の搬送からテロ攻撃要員の移動等、ガザ地区やハマスにとって重要な役割を果たしています。このような地下トンネルは無数に存在し、ガザ地区からエジプトへ、ガザ地区からイスラエルへと言ったように、ルートも様々です。ガザ地区に掘られたトンネルの入り口(イスラエル軍広報アカウントより)
イスラエルは以前より、地下トンネルを通じたテロ攻撃に悩まされていました。2006年にも地下トンネルから潜入したハマス戦闘員が、警備にあたっていたイスラエル兵2名を殺害、1名を誘拐する事件が起きています。
また、ガザ地区からは頻繁にロケット攻撃が行われています。ハマスは射程4kmから75kmのロケットを保有しており、軍事行動が始まった7月8日以降、1000発以上のロケット弾がイスラエルに向け発射されています。この攻撃はイスラエルの人口密集地を狙ったもので、イスラエル全国民の約70%にあたる500万人以上がその射程圏内で生活しています。下の映像はイスラエルで開かれた結婚披露宴の最中にロケット攻撃警報が発令されて、参列者が避難する様子を写したものです(後半はロケットを迎撃するアイアンドーム防空システム)。このように、イスラエル国民の相当数は、日常的に脅威にさらされています。
このように日常的に脅威に晒される環境が、イスラエル国民にどのような影響をもたらしているのでしょうか。世界的な軍事史学者として知られる、イスラエルのマーティン・ファン・クレフェルト氏の言葉にその答えがあります。先日来日したクレフェルト氏は、講演の中で脅威にさらされるイスラエルについて、「政府より国民の方が極端な措置を要求し、報復を求めている。2006年にレバノンを攻撃しなかったら、恐らく政権は倒れていたと思います」と、国内事情を吐露しています(※当該講演要旨)。実際に今回の軍事行動においても、ハマスと一時停戦した直後にハマスのロケット弾攻撃でイスラエル民間人に1人の死者が出たため、イスラエルのネタニヤフ首相に対して、国内から強い批判の声が上がっていると報道されています。イスラエルの強硬な姿勢も、国民の強い支持を受けた結果の行動なのです。
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