高血圧には意味がある
医者の言うことを信じて病院に通い、毎日欠かさず薬を飲んできた身からすれば、今まさに繰り広げられている、「病気のボーダーライン」をめぐる争いに失望するのは当然だろう。
かたや、ひたすら基準値を厳しくして一人でも病人を増やそうとする製薬会社と、その手先となって動く医者たち。かたや、今までの基準値をご破算にしてでも病人を減らし、医療費削減を目論む国と官僚—彼らの目には、国民の不安も混乱も、憤りも映ってはいない。自らの利益と保身がすべてなのだ。
いったい「健康」とは何なのか?いったいどこからが「病気」なのか?本誌は正常と異常、健康と病気を分かつ真の分岐点を探るべく、総力取材を行った。
まずは、従来の129と比べて大幅に高い147というボーダーラインが示され、最も大きな話題になっている血圧である。
「かつて、高血圧の基準値は上が180、下が100でした。それが年代が下るにつれ、140、さらに130と厳しく変更されてきたわけです。以前はそもそも『高血圧は病気であり、治さなければならない』という考え自体、私たち医師の間にも薄かったのですが……。薬屋さんは、実にうまくやったもんですよ」
第1部にも登場した、松本光正医師はそう語る。埼玉県で40年間内科診療に従事し、10万人以上の患者を診てきた松本氏は、高齢の患者を長年診察し続けるうち、こんな疑問にぶつかったという。
「なぜか血圧を下げる薬を飲んでいた患者さんばかり、脳梗塞になるんです。
庭のホースの中にゴミが詰まったらどうするか。蛇口を開き、水を勢いよく出して押し流すでしょう。薬で無理に血圧を下げると、血流の勢いが弱いので血栓が流れていかず、脳梗塞を引き起こす。高血圧にも、こういう役割があるということに気付いたのです。
しかし、誰もそれを指摘せず、頭ごなしに『高血圧は悪だ』と決め付けているのが医学界の現状です」
事実、東海大学医学部が'06年に行った調査では、降圧剤を飲んでいる高血圧患者が脳梗塞になる確率は、飲んでいない高血圧患者のおよそ2倍に達するとの結果が出ている。
「'60年代には脳卒中が死因のトップで、そのうち8割が脳出血でした。しかし現在、脳卒中は死因の第4位まで後退し、その内訳のほとんどが脳梗塞になっています。
昔に比べて栄養状態が良くなった現代人の血管は、めったなことでは破れませんから、血圧が上がっても脳出血は起きづらい。それよりも、ムリに血圧を下げることによって脳梗塞になることを心配すべきです。
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