年金のアロケーション変更?
先週発表の主体別売買動向を見ていると、現物株式では信託銀行の買い越しが目立ちます。
7月第1週の現物買い越し834.7億円に引き続き、
7月第2週には342.4億円の買い越しになっています。
信託銀行の売買動向年金の動きを大きく反映しているため、この買い越しはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人 )のアロケーション(資産配分)変更に絡んだ年金基金の買いではないか、という見方が出ています。
EFP取引が入っているかも
ただ、同期間に対応する主体別売買動向のTOPIX先物データをみると
7月第1週に605億円相当の売り越し
7月第2週の798億円相当の売り越し
となっています。
現物は買っているものの先物では売却しており、ちょっとちぐはぐな動き。 純粋に株式のエクスポージャを増やしているわけではなさそう。
これはEFP取引(Exchange of Futures for Physicals)が入っている可能性が高そうです。
EFP取引とは、先物を買い建てておいて、後にそれを現物に変える取引を呼びます。
なぜ、信託銀行(年金基金)はこのような取引を行うのでしょうか?
(パッシブ系の)機関投資家の動きに詳しい人だとピンと来る人もいるかも知れませんが、あまり知られていないと思いますので、ちょっと理由を書いてみます。
ちょっと込み入った話になるので、冗長になるのは許してください。
配当落ちによるベンチマークからの乖離を埋める
年金ファンドの国内株式(パッシブ)運用はベンチマークに、配当込TOPIXを利用しています。
これは、国内株式部分の運用成績を配当込みTOPIXに合わせることを目標にする、と言う意味です。
年金基金から運用を委託されている運用会社は、運用成績を配当込みTOPIXに合わせるため、配当落ちが発生時点(多くの企業は3月)で、配当落ちに相当する金額を再投資する必要があります。
そうでないと、配当落ち分の株価下落によるエクスポージャの減少で、配当込みTOPIXと運用成績が乖離(上にも下にもマイルドなパフォーマンスになる)してしまいます。
ちょっとわかりにくいかも知れませんが、配当込みTOPIX指数は配当落ち日を挟んでも100で運用できる(したことになっている)のに対し、配当落ちに相当する金額を再投資しないと、(配当落ち分が2とするなら)98で運用することになってしまうからです。
98で運用すれば、100で運用している配当込みTOPIX指数とパフォーマンスが乖離するのは当然です。
これを避けるためには、(98を100にするために)配当落ちが発生時点(多くの企業は3月)で、配当落ちに相当する金額を再投資する必要があるのです。
しかし、配当落ち時点では、配当金は支払われていないため、現金を使って現物株を買うことはできません。
ではどうするか。
配当落ち分のエクスポージャーを取るために、先物を買い建てます。想定元本が配当落ちに相当する金額を先物買いを入れるわけですね。
このオペレーションは多くの企業が配当落ち日を迎える3月末に最盛期を迎えます。
そして、6月になってくると、実際に配当金が支払われるため、現物株を購入するための現金が準備できます。
ここで、これまでエクスポージャを膨らませる(配当落ち分を維持する)ため保有していた先物買いをポジションを反転させることになります。
これが、配当落ちの時に買い建てておいた先物を現物に乗り換える取引(EFP取引)が発生します。
すなわち、先物売り+現物株買いですね。
これがおそらく7月の1週、2週の主体別売買動向で、現物買い、先物売りになっていた理由でしょうね~。