子供たちが憧れる「医師」は自殺率が高い職業
大人の4人に1人が自殺を考えたことがある──。内閣府が5月2日に発表した調査でこんなことが分かった。年代別では20代の割合が最も高かった。14年連続で年間3万人を超える自殺者。その約8割が何らかの精神疾患を患い、半数をうつ病が占めるという。
皮肉なことに、治療を担う医師の自殺率は高い。警察庁の「自殺の概要」によると、2005年と06年は医師の自殺率は自殺者全体の1.3倍だった。07年以降は職業名が「医師」から「医療・保健従事者」に変更となったが、07年298人、08年319人、09年338人、10年374人と増加。警察庁が3月に発表した11年の調査結果では、全体の自殺者数が98年に3万人を超えてから最も少なったため、医師・保健従事者の自殺者も366人と前年よりも減少した。
医師の自殺の原因・動機は、健康問題が最も多く、家庭問題、勤務問題、経済・生活問題、男女問題と続く。詳細を見てみると、健康問題の中で過半を占めているのが「病気の悩み・影響(うつ病)」だ。
長年、医療費を抑制していたイギリスの医療に詳しい近藤克則・日本福祉大学教授によると、イギリスでは90年代に医師や看護師が不足し、長時間労働による「燃え尽き症候群」により、自殺率は医師が他職種の2倍、看護師で4倍となったという。現在、イギリスは医療費拡大を伴う医療制度改革を進めているが、かつてのイギリスのように日本の医療を荒廃させてはなるまい。
子供の日を前にした5月1日、第一生命保険が子供たちの将来なりたい職業ランキングを発表した。男子は4位に「お医者さん」、女子では5位に「看護師さん」が入った。あこがれの職業に就いた結末が自殺では、あまりにも悲しい。
2012年5月 7日 20:04 | 医療・医療報道