マレーシア機撃墜:ソーシャルニュースの事実とウソを見分ける方法
コメントする07/19/2014 by kaztaira
295人が乗ったマレーシア機(ボーイング777)の撃墜のような大事件が発生すると、ソーシャルメディアには、膨大なニュース記事、写真、動画があふれる。そして、衝撃的なコンテンツは、一気に拡散していく。だが、その中には、全くの偽情報も紛れ込む。
例えば、マレーシア機が墜落し、爆発、炎上する瞬間を撮影したというこのユーチューブ動画は、事件が発生した7月17日にアップされ、3日間で3万7000回以上も視聴されている。
だが実際には、これは2013年4月29日にアフガニスタンのバグラム空軍基地を離陸直後に墜落したボーイング747の貨物機の映像だという。
ソーシャルニュースには、事実とウソを見分ける方法が必要だ。
●オープンニュースルーム
この動画の真偽を検証したのは、ソーシャルニュースを検証、配信する通信社「ストーリーフル」がグーグル+上で運営する、クラウドソース型の検証サイト「オープンニュースルーム」だ。
「ストーリーフル」は、ニューヨーク・タイムズやBBCなどの既存メディアとも提携する一方、ニューズ・コーポレッションが昨年末、買収を表明している。
ただ、クラウドソースといっても、検証に参加するのはサイトの趣旨に賛同するジャーナリストか専門家たちのようだ。
この他にも、撃墜に使われたと見られるロシア製地対空ミサイル(BUK ブーク)を、親ロシア派武装勢力がロシアに移送する模様、としてウクライナ内務省が公開した動画は、現在、検証作業中だという。
まだ、マレーシア機撃墜についての、親ロシア武装勢力の通話とされる音声ファイルを英語に書き起こした動画も、検証用にアップされている。
●フェイスブックが配信する
ストーリーフルと提携して、検証済みのソーシャルニュースコンテンツを配信しているのが、フェイスブックの「FBニュースワイヤー」だ。
例えば、乗客と見られるオランダ人が、フェイスブックに投稿したマレーシア機の写真は、事故翌日に配信された。「消息不明になった時のために、飛行機はこんな感じ」とのコメントとともに、アムステルダム・スキポール空港を出発する前の機体が映されている。
Post by FB Newswire.
ストーリーフルとFBニュースワイヤーの取り組みについては、コロンビア大学ジャーナリズムスクールの「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」のリポーター、ジヒー・ジョリーさんが「バイラルビデオの真偽を見分ける方法」でまとめている。
●真偽を見分けるサイト
また、ニュースブログ「ギガオム」のシニアライター、マシュー・イングラムさんは、「マレーシア機事故のような速報ニュースの事実確認を手伝いたい? あなたが使えるノウハウとサイトがこれだ」で、検証サイトとツールをまとめている。
イングラムさんも、まず紹介するのはストーリーフルのオープンニュースルーム。
さらに、よりオープンで、誰でも参加できる検証サイト「グラスワイヤー」。ここでは、それぞれのソーシャルニュースについて、「賛同」「確認」「異議」「共有」のボタンが容易され、コメント欄に、誤りの指摘を書き込むことができる。
「マレーシア機事故」「イスラエル・パレスチナ紛争」「イラクの過激派組織イスラム国」など、現在進行中のニュースのテーマが並ぶ。
ソーシャルブックマークサイト「レディット」にも、ウクライナ情勢のフォーラムがあり、ソーシャルニュースの真偽をめぐる議論が行われているようだ。
もちろん、ツイッターやフェイスブックそれ自体も、偽ニュースの拡散元であると同時に、検証機能が働く場所でもある。
ウクライナ情勢ニュースでは、キエフ・モヒーラ・アカデミー国立大学ジャーナリズムスクールが今年3月に立ち上げた検証サイト「ストップ・フェイク・オルグ」も、ソーシャルニュースの検証活動を行っている。
例えば、キエフのスペイン人航空管制官「カルロス」が、マレーシア機が消息不明になった空域近くにウクライナの戦闘機がいた、とツイートし、それをロシアのニュース専門局「RT」がニュースとして配信したケースでは、航空管制当局に取材。職員はすべてウクライナ人で、「カルロス」という名前の人間はいないことを確認している。
●誰でも使えるツール
58億点の画像データベースを使って、画像の出典と関連情報を検索できる「ティンアイ」は、ソーシャルニュースの画像の〝身元〟を調べるのに便利だ。
画像のURLと、画像ファイル自体の、いずれでも検索が可能だ。
同様の画像検索は、「グーグル画像検索」でもできる。
また、画像や動画に写り込んでいる風景から、その真偽を確認するのには、「グーグルアース」や「グーグルストリートビュー」の画像と対比させるのも、有効な手段だという。
●ハンドブック
ストーリーフルは、ニュースの検証作業のためのハンドブック「ソーシャルニュースギャザリング」をまとめている。
また、ジャーナリストの研修機関「欧州ジャーナリズムセンター」は、ニュース検証ブログ「リグレット・ザ・エラー」で知られるクレイグ・シルバーマンさんを編者に、やはり「検証ハンドブック」を公開している。
どちらもかなりのボリュームだが、参考になるだろう。
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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。
※GQ JAPANのウェブサイトに、「ジャーナリズムの伝統と流行」というテーマで、筆者のインタビュー記事が掲載されています。「ジャーナリズムが得た新たな表現方法──平和博」。よろしければどうぞ。
Twitter:@kaztaira
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