地盤沈下を工業用水道でとめていく。(昭和32年頃の大阪湾)
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作成日時 : 2010/01/14 20:07
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昭和25年(1950年)9月3日に
ジェーン台風が、大阪に襲来したときに
大阪湾沿岸は、高潮で大被害に遭った。
高潮の被害が大きくなった原因のひとつに
工場などの地下水の過剰なくみ上げによる地盤沈下が挙げられる。
その後、工業用水道を整備して、地盤沈下をとめていった。
もちろん、防潮堤も整備した。
今回は、そのころの新聞記事を載せる。
サンケイ(今の産経新聞) 大阪版 市内版 10面 昭和32年(1957年)11月9日 土曜日
防潮堤カサ上げ工事 明るい見通し
建設省が予算化準備
まず工業用水道完備へ
ジェーン台風の大災害にこりて
さる25年末から125億円をつぎこんでつくられてきた防潮堤が
来年度の完工を目の前にして
地盤沈下の危機に見舞われているため
府会 西大阪水害対策委員会 = 山本 捨三 委員長 = が中心となって
早急なカサ上げ工事の実施について建設省に陳情を続けていたが
8日帰阪した山本委員長は
工費15億円のカサ上げ工事計画が予算化される見通しがついた。
と
つぎのように防潮堤沈下の現状と建設省当局の態度を明らかにした。
西大阪の河川沿いに延長115`におよぶOP 5bの防潮堤は
すでに九分通り完成して、33年度で全計画を完了することになっているが
年々の地盤沈下でせっかくの防潮堤も沈み出し
最近の調査では
西淀川区での1b40をトップに
此花区で85a
福島、西、大正各区でも40a程度が
沈下していることが明らかになった。
このため同委員会で工費15億円、3年計画のカサ上げ工事案をまとめ
さる4日から山本委員長らが上京して建設省に陳情していたわけ。
山本委員長の話によると
建設省側でも防潮堤沈下について細かいデータをもっており
カサ上げ工事計画を予算化するハラをもっていることがわかったという。
しかし
同省ではカサ上げ工事と並行して
地盤沈下を防ぐための工業用水道の完備を急いでおり
同委員会でも府、市 および 商工会議所が三者一体となって
工業用水道完備に乗り出させるようあっせんすることになった。
工業用水道は
さる29年福島、此花両区に建設されて
1日当り5万dの給水を行い
また東淀川、西淀川両区でも
7500万円の予算で工事が急がれているが
この2つのほか
さらに4, 5ヵ所新設しなければ地盤の沈下を防ぐことはできず
25億円程度の工費が必要といわれる。
しかも、現在の水道料金では給水をうける会社や、工場の採算がとれない点もあるので
今後、府、市、商工会議所三者の話し合いで意見をまとめ
早急に工業用水道をつくれる態勢を固めることになったもの。
山本委員長の話
カサ上げ工事とともに地盤沈下を防ぐ工業用水道の完備が先決だ。
建設省も
この見通しさえつけば
カサ上げ工事を予算化する準備をしているので
早急に府、市、商工会議所に働きかけて
工業用水道がつくられるようにしたい。
サンケイ(今の産経新聞) 大阪版 夕刊4版B 3面 昭和32年(1957年)12月3日 火曜日
尼崎の地盤沈下
工業用水道で半減
全く予想外の成功
将来は完全ストップ
工業用の地下水汲上げのため
地盤沈下に悩んでいた尼崎市では
武庫川を水源に工業用水道を設け試験給水していたが
この結果地盤沈下が次第に減少していることがわかり
地盤沈下の悩みも解消できる明るい見通しがついた。
尼崎市では
各工場の地下水汲上げで毎年著しい地盤沈下に悩み
その対策として工費4億6千万円を投じ
武庫川を水源に1日の配水能力6万dの工業用水道を建設
第1次分として
取りあえず西川以西の
関西電力、尼鉄、久保田鉄鋼、尼鋼、日亜など
13工場にたいし
さる10月上旬から試験給水
さる11月1日から正式に配水をはじめた。
この結果につき
大阪管区気象台が
3日
同市東浜町の自記地盤沈下計により
同地点の月間地盤沈下量を調べたところ
さる8月には10.83_も沈下していたものが
10月には7.94_に減り
11月には5.96_と半減していることがわかった。
いまのところ、工場側の受入れ態勢が整わないため
配水量は
1日1万dから
1万5千dと
計画の4分の1以下になっていただけに
この沈下量の激減は全く予想外のことで
同市地盤沈下対策部では
将来
工業用水道が全工場に普及
地下水の汲上げがなくなれば
地盤沈下は完全にストップする見通しがついた。
と喜んでいる。
前沢 同市 地盤沈下対策部 工務課長の話
東浜町の地盤沈下は今まで14, 5aであった。
したがって工業用水道の効果が現われたことが確実である。
将来
工業用水道が普及すれば
地盤沈下は完全にとまるものと思う。
↑ 両記事ともに、大阪府立中央図書館で入手したもの。著作権の保護期間が満了しているので転載自由とする。改行・句読点・括弧・文字の大きさ・色・太さは読みやすいように改変した箇所がある。漢数字を洋数字に変更した箇所がある。西が不鮮明だったので、別な漢字1文字かもしれない。
サンケイ(今の産経新聞) 大阪版 市内版 昭和33年(1958年)3月19日 水曜日 10面
日本一の工業用水道建設を計画
市会建設消防委
18日の市会建設消防委で
徳岡 港湾局長は
堺と市南西部のため
日本一の新工業用水道の計画を進めていることを
明らかにした。
この新工業用水の対象は
堺の埋立地、南港の埋立地、木津川沿岸の工業地帯で
水は
毛馬の洗ゼキ
または
天満付近の淀川から取り
市内を縦貫するもの。
供給水量は1日約40万dという大規模なもの。
34年度には着工の運びとなる。
↑ 著作権の保護期間が満了しているので転載自由とする。国立国会図書館(東京)で手に入れたもの。改行、句読点、括弧、文字の大きさ、色、太さは読みやすいように改変した箇所がある。漢数字を洋数字に改変した箇所がある。
イメージしやすいように、現代の毛馬のあたりの地図を載せた。
今のゆとり教育では
教科書によっては
中学校で
地盤沈下をあまり取りあげていない。
例:『新編 新しい教科書 公民』(2 東書 公民909)
そこで、そういう中学生でも
理解できるように
模式図で
地盤沈下を説明してみた。
ただし、単純化したことを断っておく。
大阪の地盤沈下について
詳細なデータがわかりやすく載っているブログを発見したので
下記に載せる。
『ツバル水没危機の真相』
http://hiroshi-kobayashi.at.webry.info/200803/article_1.html
大阪の人は、こんなに地盤沈下が進んだのに
地球温暖化のせいにしなかった。
(昭和30年代前半、地球は温暖化していることになっていた。
http://supplementary.at.webry.info/200802/article_23.html
http://63164201.at.webry.info/201001/article_3.html)
そういう点では
大阪の人はえらいと思う。
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