パラダイムシフト 〜アヒルがウサギに見える日〜

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<<   作成日時 : 2010/02/25 22:21   >>

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複雑系の科学には、「社会的ジレンマ」というものを研究する分野があります。数学者や物理学者や心理学者などが共同で研究する場合が多いです。主にコンピュータで複雑な計算をして、ゲームのように社会を再現するので、「ゲーム理論」などと呼ばれることもあります。

社会的ジレンマとは、共有地の悲劇で見られるジレンマや、2008年4月6日の日記で紹介した「囚人のジレンマ」など、社会で生じるさまざまなジレンマを指します。これらのジレンマがどのように収斂していくのか、ということを研究しているのです。

「無駄な研究をしているな」と思われるかもしれませんが、私はこういうの、好きです。(^_^; 仕事がなかったら1日中研究していても飽きないでしょう。

ジレンマが生じる社会(コンピュータの中でシュミレーションするバーチャル社会ですが)が、いったいどんな形に収斂していくのかというと、「協力的な者たち」(為に生きる人々)が多くなっていくのです。これは、おもしろさを通り越して、感動的です。詳しくは、2008年4月6日の日記をお読みください。

共有地の悲劇を紹介した日記には、「このジレンマは、論理的手段(科学的手段)では解決できないことが分かっています。非論理的手段(宗教的手段)でしか解決できないのです」と書きました。もう少しトーンを落として書けば、「理性でなく感性を働かせる」とも言えます。つまり、合理的に行動するよりも、感情的になったほうが得をするということです。

「本当かな〜」と思われるのは仕方ありません。しかし、いろいろな社会的ジレンマを、いろいろな戦略をもつ登場人物で何世代も繰り返すシュミレーションをすると、たいてい感情的な登場人物や、為に生きる人物などのグループが多くなっていくのです。

例えば、こんな例なら分かりやすいでしょう。

極めて合理的な私(^_^;)が職場で、通勤中に財布を落としたことに気づきました。3,000円入っていました(少なあ〜い)。お金を取り戻したければ、警察に届け出なければなりません。

ところが、極めて合理的な私は、こう考えます。

「私の時給は、1時間2,000円だ。職場から警察へ行って、被害届を出して戻ってくるのに2時間はかかるから、4,000円かかってしまう。交通費も1,000円かかるから、計5,000円。3,000円取り戻すのに5,000円をかけるのは損だから、財布はあきらめよう」

確かにこのコスト計算は合理的です。正しいです。結局、3,000円を失いましたが5,000円のお給料をいただきましたので、トータル2,000円の利益を得ました。

さて、私と正反対の、極めて感情的なあなたが(失礼、たとえです)、同じ3,000円を落としたらどうでしょうか。時給だコストだなどと考えずに、とにかく「たいへんだぁ〜」と叫びながら走り出し、警察に飛び込みます。結果として3,000円を取り戻せましたが、5,000円のコストがかかったので、2,000円の損出です。

極めて合理的な私の方が、短い時間での「部分最適」としては正しい解を選択しました。しかし、長い時間(つまり人生)での「全体最適」では、正しい解とはいえません。

たとえば、私が「3,000円を取り戻すために5,000円のコストをかけない」ということを、職場の人々に知られたらどうでしょう。「あいつの持ち金が3,000円のときならば、こっそり盗んでおいても(どこかで落としたと思って)警察に届けない」と思われます。絶対に警察に捕まらないから、盗みたい放題です。何年も経てば、何十万円も損をしてしまうかもしれません。

(うちの職場の人が盗みをしそうな人たちだ、というわけではありませんので、念のため(^_^;)

逆に、極めて感情的なあなたは、「ちょっとのことでもすぐに警察に飛び込んでしまう」ということが知れ渡ります。「あいつの物を盗んだら、確実に警察に捕まってしまう」と思われ、長い人生の間で泥棒に遭うことはないでしょう。

「社会的ジレンマは、合理的な手段では最適な解が得られない。感情的な手段の方がかえって良い解が得られる」ということです。もう少し上品な言い方をすれば、「理性よりも感性を働かせた方が、社会的ジレンマの中ではベターな解を得られる」ということです。

あまり、たとえが良くなかったかもしれませんが、社会的ジレンマについて関心をもっていただくキッカケになれば幸いです。とにかく、こういうことを真剣に研究している人がおり、その研究成果がゲームとはかけ離れた「宗教的世界」に近づいてくることが、なんとも楽しいです。


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