80年代前半のマニアック男子、という設定にぴったりの本棚。
横山光輝の「あばれ天童」を入れるセンス、ナイスです!松本零士の著作は「スタンレーの魔女」「ミライザーバン」を選んだのは偉い!
「スタンレー」は少年サンデー掲載の戦場マンガシリーズで、最後の1ページで読者を驚愕させた名作中の名作。サンデーコミックス版の表紙もカラー原稿が美しい。
「ミライザーバン」は松本作画・デザインが頂点を極めた時代の代表作。
ジョージ秋山の「ザ・ムーン」を入れたのは、これは順当なチョイスだけど、ながやす巧を忘れなかったのはさすが。当時のながやすは「白黒の魔術師」と呼ばれ、粗悪な少年週刊誌の印刷上で「最も美しく見える原稿」を書くので有名だった。マンガ家を目指すモユルが押さえておくべき作家である。
「死ぬ!恥ずかしくて死ぬ!こんなもん、オンエアするな!」と当時のファン達が絶叫しそうなマンガ読みあげシーン。特にラストページのこっぱずかしいポエムのあとに、サンデー表紙の「プロゴルファー猿」がどUPで写るカット割りは、本当に福田監督の人格の悪さを表していてサイコー(いろんな意味で)である。
近鉄・喜志駅より大阪芸大のキャンパスまで走るバス。現在は坂の上のバス停まで昇ってくれるが、80年代は坂下のロータリーまでしか行ってくれなかった。そのため、学生はあの長ーい坂を徒歩で登るしかなかったのだ。
メインキャストだけで無く、エキストラのみなさんも男子はシャツをパンツにインしてるのに注目!そうです、あの時代、男たちはみんな「シャツはズボンに入れる」だったのです。
あえて不満を言うなら、男子のロン毛率が低すぎ。三人に一人が肩以上に伸ばしていたはず。
モデルになったのは大阪芸大で当時、教えておられた依田(よだ)教授。
依田さんは黒澤映画の脚本家を務め、ジョージ・ルーカスが尊敬のあまりスターウォーズのヨーダのモデルになった、という噂があったほど国際的に有名な先生。
こういう一連のとんこさんのセリフが、以後どんどんモユルを追い詰めていく。まさに悪女。原作では無自覚に描かれていたとんこの「無自覚な悪女」っぷりをドラマ版では福田監督の性格の悪さゆえに思いきりクローズアップして描いている。
フィアット500が落下して山口県警のパトカーを押しつぶす。
フィアットは「ルパン三世 カリオストロの城」でルパンと次元が乗り倒した小型車。同アニメ内では埼玉県警のパトカーだったが、庵野秀明は出身地の山口県警としてリメイクした。つまりこのアニメはパロディなのだ。
ちなみに、後に赤井孝美は「ガラスなどの破片が三角形なのは、庵野の発明」と語る。
三角形とは最低の工程数で描ける図形でありながら、作画上で乱舞させると「ちゃんと破片に見える」のがすごいそうだ。
これは南が正しくて、焔が間違っている。集団作業のアマチュア映画、特に提出課題でいちばん大事なのは「現場のノリと、納品スケジュール」だからだ。
内容なんて、どうせ作ってるうちに楽しくなって懲りまくるに決まってる。
だから最初に決めるのは「ちゃちゃっと適当に」で充分。
逆にモユルのように構図や動き、効果を決めつけようとしても、俳優やカメラがそれに追いつかない。
アマチュアの実写現場でもっとも大事なのは「完成させる」「その中でベターを探す」という現場主義なのだ。
大阪芸大・映像計画学科の前には、いまだにこの看板がある。
先日のスタッフ打ち上げで、試写を見た赤井孝美と山賀博之がこのシーンで絶句。
「すごい!あのダメなフィルムのまんまだ!」
それほど島本和彦のデビュー映画はダメであり、本ドラマでのダメさ再現率は監督の人の悪さに比例するかのごとく劇的に高いのだ。
しかし、実際のフィルムは音が割れて聞こえにくく、これよりももっとずっと面白くなかったそうだ。
※あくまで岡田斗司夫さんの個人的な感想であり、事実とは異なる可能性もあります。