中国の4~6月期の国内総生産が発表された。成長率は7・5%で悪くない。

 ただ、先行きが心配だ。問題は、財政も金融も不動産にかかわりすぎている点にある。

 この体質を変えるだけの改革をすすめる実行力が、習近平(シーチンピン)政権に問われている。

 リーマン・ショック後の積極財政と金融緩和で住宅価格は急騰した。だが、曲折をへて今春から低迷がはっきりした。

 1~6月の住宅販売総額は去年の同期より9・2%減った。主要都市の8割で新築住宅が値下がりしているという。

 マイホームを買えない庶民からみれば歓迎されるだろう。だが需給のバランスが崩れれば、負の連鎖が起きかねない。

 中国のいびつさは、財政が不動産に頼っている点にある。

 各地の野放図な開発を後押ししたのは地方政府だ。国有地を使う権利を開発業者に売るなどして、不動産関連の収入が地方財政の4割を占める。

 税収を補うとして、権利の売却は加速している。ことしは6月までに全国で2兆1千億元(約35兆円)にのぼり、去年の同期より26%増えた。地価が下がれば、財政に穴があく。

 銀行は、貸し付けの3~4割が不動産向けか不動産担保による融資だ。価格が下がれば経営を直撃する。銀行以外の民間企業が手がける不動産の投資信託は破綻(はたん)が始まっている。

 習政権は経済の構造的な改革を打ち出し、「目先の景気変動に強い刺激策を打つことはしない」(李克強〈リーコーチアン〉首相)方針だった。ところが実際には老朽住宅の建て替えや、鉄道建設などの景気対策に乗り出している。

 景気の失速で矛盾が噴出するのを避けたいのだろうが、不動産に依存した構造に切り込むことを忘れてはならない。

 財政は、中央と地方との税収の分け方を見直したうえで、基本的に税収で予算をまかなえるよう改革するのが筋だ。

 これまで売られた土地は、農民の意に反して安く収用した農地が少なくない。農民の正当な権利を認めることを含め、大いに改善の余地がある。

 金融面では、官民入り乱れて多様化している資金の流れに対し、監督を強めるしくみを整えることが課題になろう。

 これらは多かれ少なかれ、昨年11月に開かれた共産党の中央委員会の会議で、決定事項のリストに載っていた。その成否を世界が見つめている。

 中国経済が健全で安定した成長を続けるなら、日本を含む各国の利益につながる。