悲痛きわまる惨事としか言いようがない。

 ウクライナ東部でマレーシア航空機が墜落、乗客乗員298人全員が死亡したとみられる。

 周辺では、ウクライナの政府軍と親ロシア派武装勢力との戦闘が激化している。マレーシア機も戦闘の巻き添えとなり、対空ミサイルによって撃墜された可能性が濃厚である。

 乗客には、夏休みの旅行に向かう子どもたちや、豪州でのエイズの国際会議に出席予定の専門家らが含まれていた。

 民間機への攻撃を断じて許すことはできない。

 オバマ米大統領や国連の潘基文(パンギムン)事務総長が訴えるように、原因の徹底的な国際調査を実現しなくてはならない。

 国際社会は足並みをそろえ、欧州安保協力機構(OSCE)などを軸に、何が起きたのか全力で究明すべきだ。

 ウクライナ政府は、親ロシア派武装勢力による「テロ攻撃」と主張している。

 武装勢力は今月、高い高度も射程に含むミサイルを入手したと表明し、実際にウクライナの軍用機を撃墜していた。

 今回の現場は武装勢力の支配地域にある。関与を否定するのなら、機体などを保全したうえで調査団を受け入れ、原因究明に率先して協力すべきだ。

 ウクライナ東部では今月、政府軍が拠点を奪回した後、戦闘が急速に激化した。武装勢力が高性能のミサイルや戦車などでにわかに戦力を高めたからだ。

 米欧は、背後にロシアの後押しがあるとみている。今週、ロシアに対する制裁を厳しくし、強い警告を送っていた。

 事件は、ウクライナの動乱が世界の安全を揺るがす深刻な問題であることを示した。

 今後もロシアが武装勢力への支援を続けるならば、国際社会からのいっそうの非難の高まりは免れない。

 ロシアは今回の原因究明にきちんと協力したうえで、武装勢力に強硬な抗戦をやめさせねばならない。ウクライナ政府との対話を通じた現状の打開を急ぐ責務がある。

 米欧も、当事者たちの交渉仲介の努力を強めるべきだ。紛争に無関係な多くの人命が失われた悲劇の衝撃をせめて、和平づくりの契機に転じるべきだ。

 日本は今週、岸田外相がウクライナを訪ねたばかりだが、看板の「積極的平和主義」に見合うような関与は見えない。

 ロシアが行動を改めないなら、新たな制裁強化や米欧との協調行動など、決然とした対応を考えるべきではないか。