イスラム国:バグダディ指導者 謎多き第2のビンラディン

毎日新聞 2014年07月07日 20時46分

 【カイロ秋山信一】イラクとシリアで活動するイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」のアブバクル・バグダディ指導者を巡る情報戦が活発化している。欧米メディアでは「第2のビンラディン」とも評されるが、経歴や容姿は謎。イスラム国側はバグダディ指導者とされる映像や音声を相次いで公開しており、その「カリスマ性」を勢力拡大に利用しようという思惑がうかがえる。

 バグダディ指導者とされる男性の映像は5日にインターネット上で公開された。黒布と黒いターバンを着用し、イスラム礼拝所(モスク)で「神はムジャヒディン(イスラム聖戦士)の戦いと忍耐に勝利を与えた」と語りかけた。勝利とはシリアとイラクにまたがる地域を実効支配し、「イスラム国」の建国を一方的に宣言したことを指すとみられる。

 米政府によると、バグダディ指導者は1971年、イラク中部サマラで生まれた。イスラム過激派サイトによると、首都バグダッドの大学でイスラム学の博士号を取得し、2003年のイラク戦争時はモスクの説教師だった。04年2〜10月に駐留米軍に拘束され、その前後に過激派組織に参加したとされる。

 所属組織の指導者が相次いで米軍に殺害されたのを受け、10年5月にトップに就任。12年夏に本格化したシリア内戦に乗じて戦闘員や武器を確保し、組織を立て直した。これまでにシリア東部からイラク北部に至る広域を実効支配し、イスラム法に基づく統治を実施。6月にはイスラム教の最高指導者「カリフ」を自称し、新国家建設を宣言した。

 ただ、公開されている情報は米国とイラク政府の手配写真ぐらいしかない。米国は1000万ドル(約10億円)の懸賞金をかけてバグダディ指導者の行方を追っている。

 イスラム過激派の動向に詳しいジャーナリストによると、過激派の若者の間でバグダディ指導者の人気はアルカイダの現指導者ザワヒリ容疑者をしのぐほどという。ネットで公開された映像が本物だとすれば、カリスマ性を強調し、戦闘員の勧誘や資金集めに利用する狙いがあるとみられる。イラク政府はバグダディ指導者が軍の攻撃で負傷しており、映像は偽物だと主張している。

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