【カイロ=押野真也】イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻に踏み切った。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」の戦闘員がイスラエルへの侵入を図ったことでテロの脅威が迫っていると判断したようだ。米国やエジプトによる調停が機能せず、暴力の応酬が激化する懸念が強まっている。
イスラエル軍は17日夜(日本時間18日未明)に戦車部隊と歩兵部隊をガザ内に派遣した。空爆と海上からの攻撃で陸上部隊を支援してガザに侵攻した。地上戦により、ガザの一般市民を含む30人以上が死亡し、イスラエル兵1人も死亡した。
ネタニヤフ首相は地上部隊派遣の最大の目的は「(密輸)トンネルの破壊だ」と述べた。ガザの地下にはエジプトやイスラエル領内につながる1000本以上の地下トンネルがあるとされる。17日にはハマスの戦闘員13人がトンネルを通じてイスラエル領に侵入しようとし、イスラエル軍に阻止された。
ネタニヤフ首相は地上軍投入に慎重だったとされるが、この侵入事件を問題視し、地上軍投入を決めたようだ。ハマス戦闘員の侵入を許せば、一般市民を狙ったテロが頻発しかねないからだ。
トンネルは戦闘員を送り込むだけでなく、経済封鎖を回避する物資の密輸にも使われている。トンネルの再建には数年かかるとされ、破壊によりハマスの経済的な困窮は一段と深まる。
ハマスを敵視するエジプトのシシ政権はエジプト領に直結する数百本のトンネルを破壊しており、イスラエル側のトンネルが破壊されればハマスへの打撃は大きい。
ただ、イスラエル側はハマスの武装解除と弱体化を望むものの、組織の壊滅までは望んでいないとみられる。「ハマスがいなくなれば、より過激な勢力がガザを統治することになる」(有力紙イディオト・アハロノト)との懸念があるためだ。
双方の停戦に向けては、エジプト政府が仲介し、イスラエルとハマスの当事者を加えて協議を続けている。しかし、締め付けを強めるエジプトのシシ政権に対するハマスの不信感は強い。ハマスを支援するトルコやカタールが停戦に導く動きも見られない。
米国はイランの核協議やウクライナ情勢に追われ、ハマスへの停戦圧力は弱い。18日にはオランド仏大統領がエジプトとイスラエルを訪問する予定だが、停戦協議が前進する兆しはない。
ハマスはイスラエルの地上侵攻に対し「高い対価を払うことになる」と反発し、徹底抗戦する意思を示した。イスラエルは地上作戦を数日内で終える方針とされるが、ハマスの抵抗が長引けば戦闘が長期化する可能性もある。
ハマスは停戦の条件として、経済封鎖の緩和を求めているとされ、無条件停戦を求めるエジプトやイスラエルなどとの間には開きがある。ハマスは無条件停戦に応じればガザ市民に「戦果」を示すことができず、求心力を失いかねないため、無条件停戦の受諾は難しくなっている。
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