「福島の教訓どこへ」原発事故避難者反発 川内原発新基準適合
原子力規制委員会が16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働の前提となる審査で事実上の「合格」を決めたことについて、東北の原発事故被害者からは「福島の教訓が生かされていない」などと批判の声が上がった。一方、原発立地地域の関係者からは評価する意見も出た。
福島第1原発事故の後、全域が避難区域となった福島県飯舘村から福島市内に避難した無職遠藤由勝さん(69)は「原発は絶対に再稼働すべきではない」と反発した。
全村避難は続き、現在も仮設住宅で不自由な暮らしを送る。「技術力を生かして自然エネルギーを増やすなど、原爆と原発の災禍を経験した日本だからこそ示せる道筋があるはず」と訴える。
東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に反対する仙台原子力問題研究グループの篠原弘典世話人は「規制委は再稼働ありきで審査している。新規制基準は福島原発事故の対症療法にすぎない」と批判。「女川原発の問題点を検証していく」と語った。
女川町の須田善明町長はこれまで、女川原発の再稼働の是非は「まだ判断できる段階にない」との考えを示してきた。
今回の規制委の判断を受け、今後について「新規制基準で原発の安全性がどう向上したのか、国は責任を持って審査結果や経緯などを丁寧に立地地域や国民に説明すべきだ」と指摘した。
規制委の決定を評価したのは、東北電の東通原発が立地する青森県東通村の越善靖夫村長。「日本のエネルギー・原子力政策にとって一つの大きな節目だ」とのコメントを発表し、再稼働に向けた審査の迅速化を求めた。
女川原発2号機と東通原発1号機の審査を規制委に申請している東北電は「2基の審査に的確に対応するとともに、規制にとどまらない高いレベルの安全対策に取り組む」と話した。
2014年07月17日木曜日