「教訓生かされたのか」川内原発再稼働へ 福島の避難者疑問の声
原子力規制委員会が九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について、再稼働に向け事実上の審査合格とした16日、東京電力福島第一原発事故によって避難を強いられている県内の被災者からは「本当に事故は起きないのだろうか」と疑問の声が上がった。事故から3年4カ月が過ぎても完全収束に至らない現状に、県民は「事故収束を最優先すべき」と訴えた。
「原発事故がまだ収束してもいないのに…。本当に大丈夫なのだろうか」。大熊町から会津若松市に避難している主婦泉順子さん(61)は、川内原発に関するニュースを見ながら苦い表情を浮かべた。
4月に町の小学校教諭を定年退職した。古里への帰還は諦め市内に購入した一戸建てで生活を送る。同居している長女が働き始めたため、代わりに1歳4カ月の孫の面倒を見ている。「川内原発周辺の人たちが、原発のせいで孫の将来まで心配しなければならない状況にしてはいけない」と安全対策を徹底するよう訴えた。
二本松市の仮設住宅で暮らす浪江町の農業田尻仁一郎さん(73)は「新基準に適合したとはいえ、東日本大震災は“想定外”の地震と津波だったはず。本当に事故を防げるのか」と福島の教訓が本当に生かされているのかどうかを疑問視した。
いわき市の仮設住宅に避難している双葉町の無職坂本昌彦さん(72)は規制委の判断に「万が一事故が起きたら誰が責任を負うのか」と憤りをあらわにした。
楢葉町からいわき市の借り上げ住宅で避難生活を送る無職早川篤雄さん(74)は古里を失ったなどとして東電に対し集団で損害賠償訴訟を起こしている。「被災者の救済さえ進んでいない現状で、再び原発を動かすなど考えられない。被災地の現状を分かっていない」と訴えた。
郡山市の仮設住宅に避難している富岡町のアルバイト北崎一六さん(66)は仮設住宅暮らしが2年半を超えた。避難生活の原因となった原発の再稼働の動きが加速することを複雑な心境で受け止める。原発は周辺地域の雇用や経済活性化にも大きな影響を与えていたことを肌で感じていただけに「国や事業者は近隣住民の声にじっくりと耳を傾け、時間をかけて判断すべき」と警笛を鳴らした。
福島市のJR福島駅東口では16日夕、川内原発再稼働反対を訴える街頭活動が繰り広げられた。活動の様子を目にした市内の会社員鈴木怜子さん(43)は「原発再稼働より事故の収束や原因究明が先ではないか」と指摘した。
( カテゴリー:主要 )