広島県には世界遺産が二つある。原爆ドームと厳島神社(宮島)。ともに文化遺産である。恒久平和のシンボルとして世界に平和を訴え、また、神様の宿る島として自然と文化の大切さに思いをめぐらす。バレリーナの森下洋子さんにそんな広島への思いを聞いた。 (編集委員・朽木直文)
「母も、祖母も被爆している。祖母は左半身に大きなやけどを負い、お経まで上げられたという。(後遺症で)指先が不自由になるなど大変だったはずなのに愚痴や恨み言を言わず、前に向かって明るかった。私もその生きざまに励まされてきた。原爆はあってはならないことです」
「被爆した人が身近にいて、今も多くの人が苦しんでいる。広島の人の平和を願う気持ちは強いものがある。海外へ行けば『ヒロシマ』をだれもが知っていて、平和を考える言葉となっている。世界中の人々と手を取り合って平和を守っていくことが大切です」
「(広島市は)瀬戸内で穏やかな気候のせいか、明るく前向き。それと広島カープの応援にみられるように情熱的なところがある。集中してとことんやっていく。私もそんなところがあります」
「今年は十六年ぶりのAクラスでクライマックスシリーズにも出て、カープファンとしてはよかった。カープは身近で自分たちの仲間。家族のような存在です。市民球団ならではと思います。(低迷している時も)よく頑張っていると身内に対する温かさがあります」
「果物も魚も食べ物が本当においしいこと。中でも好きなのは小イワシの刺し身。ほかではなかなか食べられません」
「近いので家族でよく行った。子ども心にも海の中の鳥居を美しいと思った。シンプルな美しさがあります」
「ロサンゼルスでもハワイでも“広島県人会”があって応援してくれる。広島が移民県だったからですが、ふるさとへの熱い思いがあります」
−現在もバレリーナとして活躍している。それを支えているものは。
「(いろんな人に)出会えることがなによりの幸せです。周りの人に支えられてここまで来た。感謝の気持ちが強い。バレエを通して、人々を幸せにすることができればと思っています」
もりした・ようこ 1948年広島市生まれ。3歳からバレエを始め、71年松山バレエ団に入団。74年、ヴァルナ国際バレエコンクールで日本人初の金賞受賞。文化庁芸術祭大賞、英国ローレンスオリビエ賞の受賞など世界的なプリマ・バレリーナとして活躍。松山バレエ団団長。広島県民栄誉賞受賞。広島市名誉市民。今年12月には五反田ゆうぽうとホール(21〜23日)などで「くるみ割り人形」を公演。
◆東京広島県人会
都内と近郊に在住の広島県出身者を中心として1947年発足。年に一度の総会・懇親会のほか、定期会員誌の発行、スポーツ観戦などのイベント、ゴルフクラブや、陶芸、釣りなどの同好会がある。40歳代以下の青年部も。会員は約2100人。事務局は広島県東京事務所内=電03(3591)0028。
◆主な広島県出身者(生年順)
【過去】沖牙太郎(沖電気創業者)加藤友三郎(首相)久保田権四郎(クボタ創業者)松田重次郎(マツダ創業者)秦逸三(テイジン共同設立者)鈴木三重吉(児童文学者)竹鶴政孝(ニッカウヰスキー創業者)池田勇人(首相)織田幹雄(陸上選手)新藤兼人(映画監督)奥田元宋(画家)宮沢喜一(首相)平山郁夫(画家)中沢啓治(漫画家)
【現在】阿川弘之(小説家)栄久庵憲司(工業デザイナー)広岡達朗(野球解説者)池田敬子(体操指導者)大林宣彦(映画監督)三宅一生(デザイナー)張本勲(野球解説者)的川泰宣(宇宙工学者)山本浩二(野球解説者)矢沢永吉(歌手)岡本綾子(プロゴルファー)西城秀樹(歌手)有吉弘行(タレント)綾瀬はるか(女優)
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