井伏鱒二らを記した「阿佐ケ谷文士村マップ」=東京都杉並区の阿佐谷図書館で
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原爆ドームと宮島、広島カープにカキ、お好み焼きが一般的なイメージだろうか。逆手に取った「おしい!広島県」のキャンペーンが話題だ。南は瀬戸内、北は山陰に連なる山間地と、地勢的にも多面な顔を持つ。大きな足跡を残した作家の話から始める。(編集委員・朽木直文)
JR阿佐ケ谷駅から徒歩約十分。東京都杉並区立阿佐谷図書館の入り口に「阿佐ケ谷文士村」の説明板がある。一九九三年に図書館の開設と併せ、立てられた。その筆頭に井伏鱒二の名がある。現在の広島県福山市の出身だ。
代表作「山椒魚(さんしょううお)」や、原爆の惨禍を静かに描いた「黒い雨」などで知られる鱒二は、図書館から荻窪駅寄りの同区清水に一九二七年から亡くなるまで住んだ。この地の生活ぶりや、鱒二を慕って近くに住んだ太宰治など多くの文化人との交友を書いた「荻窪風土記」は、荻窪の名を全国に知らしめた。
鱒二は周辺の文化人らとつくった「阿佐ケ谷将棋会」や「阿佐ケ谷会」で中心的役割を担った。図書館長の黒谷晴子さん(36)は「どっしりとした態度が周りに安心感を与えたのでは」と話す。
図書館では、今月六日から十二月一日まで「没後二十年 井伏鱒二展」を開いている。
同区大宮の区立郷土博物館では、準常設展の「杉並文学館−井伏鱒二と阿佐ケ谷文士」を随時開催。鱒二の自筆原稿や書簡、愛用品とともに旧宅の復元模型を展示する。
同館長の寺田史朗さん(59)が旧宅の設計図や荻窪風土記、遺族の話などをもとに二十分の一で再現した。寺田さんは「荻窪風土記で描かれた情景がよく理解できる、と好評です」と言う。次回の展示は十二月十四日から来年一月二十六日まで。
福山市のふくやま文学館では、常設展示室の大半を使って「井伏鱒二の世界」をテーマに展示している。荻窪旧宅の書斎の再現もある。館長の皿海達哉さん(71)は鱒二の魅力を「反骨とユーモア。言葉の豊かな表現とともに独特の諷刺(ふうし)の目がある」と評する。
文学館から車で約三十分山地に入った同市加茂町には鱒二の生家がほぼ当時のまま残っている。戦時中は鱒二一家が疎開した。現当主でおいの井伏章典さん(87)は「気さくというほどでもないが、難しい人でもなかった。釣りが好きで戦時中も一緒に釣りをした」と振り返る。
◆「黒い雨」で原爆惨禍、井伏鱒二
<井伏鱒二(いぶせ・ますじ)> 1898〜1993。早稲田大学中退。「ジョン万次郎漂流記」で直木賞受賞。文化勲章受賞。
<杉並区立阿佐谷図書館> 阿佐谷北3の36の14。電03(5373)1811。
<杉並区立郷土博物館> 同区大宮1の20の8。原則月曜と第3木曜休館。電03(3317)0841。
<ふくやま文学館> 福山市丸之内1の9の9。原則月曜休館。電084(932)7010。
<ふるさとデータ>
▽面積 8479平方キロメートル(11位)▽人口 287万3603人(12位)▽工業製品(出荷額) ニット製ズボン・スカート(1位)やすり(1位)圧延機械・同付属装置(1位)総ゴム靴(1位)毛筆・絵画用品(1位)ウスター・中濃・濃厚ソース(1位)▽農水産物(収穫量・生産量) ネーブルオレンジ(1位)レモン(1位)カキ類(殻付)養殖(1位)▽人口1万人当たりお好み焼き店数(1位)▽路面電車車両数(1位)▽県庁所在地家計消費額 カキ(1位)ソース(2位)バナナ(2位)
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