局面を限定したチューリングテストに合格し、かつ実サービスにも有用なロボットは今後、増えてくる。そのような人工知能を作るには、天才技術者を集めた新技術開発が一番に必要だと思われたのなら、ちょっと違う。ユージン君もサマンサも既存の技術の組み合わせだ。より大事なのはデータである。
もし、世界中で話されている人の会話を全て記録することができれば、ロボットはほとんどの会話を再現することができる。もし、実世界とインターネットからの情報を全て把握できれば、ロボットは大抵の質問に答えることができる。
例えば、ユージン君のために道路の渋滞情報を問い合わせるたくさんの会話データを用意し、渋滞を実時間で計測するシステムを作れば、彼は道路交通情報に関する有用な会話ができるはずだ。しかし、現実は厳しい。会話技術は進歩しても、見合うデータが無い。
これでお分かりだろう。今後10年を俯瞰(ふかん)すると、音声・画像認識、会話、通訳などの知性のあるロボットの実現はデータ勝負のパワーゲームだ。課題は必要なデータをどうやって獲得するかという仕掛けだ。
それにはビジネスモデルを考慮したサービス設計を伴う。最新の技術を見極めて使うというセンスと、どうやってデータを集め商売として回すかというセンスが不可欠だ。技術開発とビジネス開発を同時に行うチーム作りが必須である。
チューリングテストというネタのオチは「人工知能実現は技術とビジネスの総力戦」ということ。その勝者が夢と思われたサービスを実現する。
[日経産業新聞2014年7月10日付]
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