アフガニスタン紛争の最中の1979年に出版されたダリー語の教材で、著者はアフガニスタン出身のネイティブスピーカーらしくどうもまだ日本にいるらしいです。ただし、内容としては会話集の域を出るものではなく、文法についてはこの本を読んでもほとんど説明がありません。全三章構成で第一章が文字と発音、二章が会話、三章が単語集なのですが実際には発音の例、会話の関連表現、分野別語彙とかこつけて単語のまとめとその対訳が並んでいるページがほとんどであり、しかもそのローマ字転写が間違いだらけで全然信用出来ないという有様なのですが、この本には一点素晴らしい長所があります。
それは、ダリー語の口語音のバリアントを大量に載せていることです。
特に一読に値するのはp47~p64の口語の音変化の特徴とイランのペルシア語との違いを述べている箇所で、ダリー語は「古典ペルシア語の特徴を保存した言語」として文献系の学者には語られることが多いのですが口語・方言に関してはそれほど実態がよく分かっていない言語ですからネイティブスピーカーによる生の情報というのは日本語媒体では貴重なのです。ローマ字転写に間違いが多いと上で書いたばかりですが、長母音の短母音化や子音交替もありアラビア文字とローマ字転写をルールに従って照らし合わせたところで実際の口語発音が不明な単語というのはたくさんあって本書のように口語バリアント形を古典ペルシア語に近い文語形と併記してくれているのは役に立ちます。ただ、著者の出身は北西部のようですがどこの方言ベースで選んだ口語形を記しているのか分からず、 どこまでがカーブル方言の特徴なのかということやパシュトー語の影響と見られる形についても特段言及があるわけでもありません。最後には現地の小学校の教科書から抜粋したとおぼしき読み物が大まかな訳と一緒に付いていますが、このための語彙集は無いので辞書を用意する必要があります。もちろんペルシア語の辞書で十分ですけど。
おまけ
dARI - Non Mi Far Mancare
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