ベネッセ流出:名簿業者に抜け道

毎日新聞 2014年07月18日 02時32分(最終更新 07月18日 03時22分)

名簿業者に関する相談件数の推移
名簿業者に関する相談件数の推移

 不正な手段で流出した顧客データが名簿業者の間でなぜ堂々と流通しているのか。

 ◇削除要求可能「オプトアウト」

 6月にまとめられた個人情報保護法改正のたたき台となる「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を審議した政府検討会でも名簿業者への対応が焦点になった。不当な勧誘や振り込め詐欺などに名簿が利用され、消費者庁の調べでも名簿業者を巡る相談件数が増えているためだ。

 同法は原則、事前に同意を得ていない個人情報を第三者に提供することを禁じている。ところが現行法23条には事後の提供拒否を意味する「オプトアウト」という規定があり、抜け道になっている。名簿業者がウェブサイトなどに「本人からの求めがあれば、第三者への提供停止や削除・訂正ができます」とうたうことで、第三者への提供を例外的に認めている。

 消費者側からすれば、オプトアウトの手続きをしようにも、自分の情報がどの業者のどの名簿にあるかの確認が難しい。業者にたどりついたとしても提供停止を求められるのはその業者だけで、名簿の入手先や売却先に要望を伝える責任は業者にはない。検討会でもオプトアウト規定の見直しを求める意見が相次いだが、大綱では最終的に「継続して検討すべき課題」との表現にとどまった。

 同法によれば、不正に情報を入手した名簿業者については名簿所有者を所管する官庁の大臣が削除を求めることができ、命令に従わない場合は懲役6月の罰則もある。ただ、実際に命令が出されたケースはなく、今回の事件のように「流出したものとは知らなかった」と説明すれば対応はできない。警察幹部も「不正競争防止法の適用も『故意性』の立証が壁になり、正直厳しい」と打ち明ける。

 石井夏生利(かおり)筑波大大学院准教授(個人情報保護法)によると、米国ではデータブローカーに対し収集先の情報源の開示を求める流れにあり、英国では本人の同意なく得たデータの売買について罰則付きの規制を実施している。石井准教授は「少なくとも米国のように入手先を公表するようにすべきだろう」と話す。【本多健】

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