産業革新機構・朝倉氏×コラーキャピタル水野氏×Feldman氏が語るアベノミクスと成長戦略
- 2013/07/15
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成長戦略を実際の成長にするには「企業が成長できるか」に尽きる
梅澤氏:安倍政権のここまでをどう思っているのか、皆さんの評価を教えてほしい。
feldman氏
これまでやったことを考えると、金融政策に関してちゃんとやったなと思っている。財政に関しては、短期的な政策は悪くないが、長期的な政策は
歳出を抑えないといけないと言っているが、水準が出せていないから不完全。第3の矢に関してもよくやっているなという印象だけれど、うまくやっているのは、農業・エネルギー・医療・教育、あんまり進んでいないのは、行政改革・税制・コーポレトガバナンス・選挙改革・移民。全て一度に進めるのは難しいけど、プロセスとして安倍さんは進めている。
水野氏
株式市場を見てるとはっきりしているけど、日本の投資家がおり続けているという現状がある。これに関して。海外の投資家はさすがに不安になってきている。そういう意味では、海外の投資家の方が黒田さんの金融政策とかを私に言わせればよりフェアに評価していると言える。
朝倉氏
ミクロレベルで経営者の接点が多いけど、全体としてムードがよくなってきているのが良いこと。しかし、最終的に成長戦略を日本の実際の成長に落とし込むには「企業が成長できるか」に尽きる。成長するための行動を企業がしているかといったらまだ迷っている。2つあって、成長のための設備投資をしているかといったら、まだそこまで出来ていないこと。もう一つは、為替が急速に変わったことによって、筋が良くてやるべき買収案件を見直したりあきらめたり、国際的なオークションで負けているケースがある。
日本のマクロ政策は、”誰がリスクをとるか”ということが抜けている
梅澤氏:アベノミクスの3本の矢は全体としてどう映っているのか?
朝倉氏
成長可能性のあるセグメントを整理したことは価値のあることで分析に関しても良く出来ていると思っている。しかし、ミクロな観点から見ると、本当に企業が成長のためのリスクを取りに行くのかというのが重要。日本のマクロ的な政策の中で抜けていることは、誰がリスクをとるかということ。誰がお金を投資するのかと、産業セグメントのターゲティングが一体化すると効果が出てくると思う。残念ながらお金と人の問題が議論できていないので、これから期待したいし私たちもどう貢献できるか考えたい。
水野氏
正直時間が全く足りないと作りながら感じていた。安倍総理の3本の矢は同じタイミングで出てこそ3本の矢という意志があった。そういう意味で時間が足らず、今回出てきたことに関して市場がガッカリしてしまったという説があるが、そういう人たちの期待値はどこだったのかということに疑問がある。もう一つ、今回出てきた中で一つでも実行したら日本の成長率は確実に変わり、相当な違いが起こってくる。
梅澤氏:国の政策を超えて、どんな成長戦略が必要になってくるのか?
朝倉氏
行動が大事で、企業経がリスクをとれないのは既得権益者との戦いがあるから。社内にも居るし、社外にもたくさんいる。彼らをとりまくステークホルダーは変化に対してネガティブであることが多い。構造的に雁字搦めになっている。
そういう中で、日本を代表する政治がそこと戦って変えていくことが大事。
水野氏
投資家のヒアリングをしたら彼らの興味は2つしかない。移民政策と女性の社会参画という労働力問題。
2つ目は岩盤規制。今回の成長戦略は、移民や女性に踏み込めていない。女性の参画によってベビーシッターなどの色んな仕事が生まれることと、男性の社会人の20%が優秀な女性に変わることによって日本の成長率が上がっていく。岩盤規制に関して、大きな変革が出来れば本当に日本は変わっていく。
成長が必要なことを認識し、最適化の方向を考えなければいけない
梅澤氏:ここまでを振り返って最後に一言をお願いします。
水野氏
日本人は原理原則の質問を繰り返しすぎじゃないかと思っている。ここは成長が必要だ
ということをルールとして飲み込んで、それが最適化出来るための方向をみんなが考えることが重要。もう一つは、「日本復興プラン」で、今から新しい日本を作っていくという前向きな姿勢が大事。
feldman氏
3つあって、1つは腹話術です。リーダーが「○○をする!」と言ったら必ず反対する人が出てくるから、安倍さんが議論をさせて決めていくということ。どういう方向性でいくかはみんな分かっているから、腹話術が上手くいくかがポイント。2つ目は締め切りをどんどん決めていくこと。3つ目は、失敗したら直せばいいという考え方。考えてばかりでは何も進まないということ。
朝倉氏
新しい考え方の中で、成功事例を早く作ることが
重要じゃないかと思っている。高度な戦略性を持って、政府主導のイニシアチブの具体的な成果をどういうタイミングで出していくかを綿密に設計していくか。これが出来れば連鎖反応で良いものが出来ていく。そういった意味で今後の政権運営が特に大事。
【登壇者紹介】
株式会社産業革新機構 専務取締役(COO):朝倉 陽保氏
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 チーフエコノミスト 兼 債券調査本部長
Robert Alan Feldman氏
コラーキャピタル (英国) パートナー 内閣官房健康医療参与:水野 弘道氏
A.T.カーニー株式会社 日本代表 グローバル取締役会メンバー(ファシリテーター)
梅澤 高明氏