【キエフ=田中孝幸】ウクライナ東部でマレーシア航空の旅客機が墜落した原因の究明は難航が必至だ。墜落現場は親ロ派が実効支配しており、ウクライナ軍との戦闘が続いている。原因究明のカギを握るブラックボックスを回収できても、信用できる調査が実現するかは不透明だ。
ロシアのプーチン大統領は18日、「もし(ウクライナ軍によって)戦闘が再開されなければ悲劇は起こらなかった」と述べ、同国東部で親ロ派武装勢力に対する軍事作戦を続けるウクライナ政府に責任があると強調。ウクライナ側はロシアが供与したミサイルを使い、親ロ派が旅客機を撃墜したと主張している。
ロシア国防省は18日の声明で、事故現場近くのドネツク州に地対空ミサイルを装備するウクライナ軍の防空部隊が展開していたと指摘。同軍が撃墜した可能性を示唆した。
一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は17日、親ロ派の犯行の疑いが濃いとの見方を示した。大統領府はマレーシア機が墜落した空域でウクライナ軍の戦闘機が攻撃した事実はないと強調。政府高官は「プーチン大統領から親ロ派に供与されたロシア製対空ミサイルで撃墜された」と断言した。
親ロ派の指導者は17日、「高高度を飛ぶ飛行機を撃ち落とせる兵器を持っていない」と関与を否定。ウクライナ軍の犯行だと主張した。ただ、親ロ派指導者は6月にはロシアメディアに地対空ミサイルの保有を表明している。14日には軍の輸送機を撃墜していた経緯があり、疑念は払拭できていない。
親ロ派武装勢力に従軍取材する一部のロシアメディアは17日、マレーシア機の墜落直後に「親ロ派が軍の輸送機を撃墜したと語った」と伝えた。その後、記事を削除した。関係国の間では親ロ派がマレーシア機を軍輸送機と誤認して撃墜したとの説もくすぶる。
ロシア、ウクライナ両国にとって、墜落に関与したとなれば国際的に窮地に追い込まれる。インタファクス通信によると、親ロ派幹部が17日、墜落機の飛行や音声を記録する装置が入ったブラックボックスを回収し、ロシアで分析する意向を示した。親ロ派の実効支配地域で事故機の保全がなされるかも焦点で、原因究明は難航しそうだ。
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