マレーシア機撃墜:危険空域 欧米・露対立激化も
毎日新聞 2014年07月18日 12時00分(最終更新 07月18日 12時25分)
【モスクワ田中洋之】マレーシア航空機が撃墜されたウクライナ東部は、政府軍と親ロシア派武装集団の戦闘が激化し、軍用機が相次いで撃墜される「危険な空域」だった。ここで初めて外国の民間旅客機が撃墜され、ウクライナ情勢は地域紛争にとどまらない新たな段階に入った。
オバマ米大統領は16日、ウクライナ問題に関連し、ロシアの金融やエネルギー企業を対象にした本格的な経済制裁を発表した。その直後に今回の撃墜事件が起きた。どこから地対空ミサイルが撃たれたのかは判明していないが、今回の悲劇を契機にウクライナを巡る欧米とロシアの対立がさらに激化する可能性がある。
ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州では、親露派が携帯式対空ミサイルなどを使用し、政府軍の輸送機や攻撃機を多数撃墜してきた。高性能の武器はロシアから流入したとされる。
今月14日に政府軍のアントノフ26輸送機が撃墜された際、ウクライナ国防当局者は「強力なミサイル兵器がロシア領から発射された可能性がある」と指摘。16日に撃墜されたスホイ25攻撃機については「ロシア軍機に攻撃された」と述べ、国境付近の上空は危険度が高まっていた。
マレーシア航空機撃墜に使用されたとされる地対空ミサイルシステム「ブク」はロシアが開発したもので、高度2万メートルの飛行目標を攻撃できる。ロシア、ウクライナ両軍が保有しており、それぞれ国境地帯の防空用に配備しているとされるが、ウクライナ軍によると、東部では配備していないという。また、親露派武装集団もウクライナ政府軍の航空戦力に対抗するため「ブク」を保有しているとの情報があり、事実とすればロシアから流入した可能性が極めて高い。
一方、現地情勢の悪化を受け、米国などの航空当局はウクライナ東部の上空通過を避けるよう航空会社に要請していた。しかし、マレーシア航空などは、ウクライナが欧州とアジアを最短で結ぶルート上にあることから上空通過を続けてきたという。