国連人権委:ヘイトスピーチに懸念 日本政府に法整備促す

毎日新聞 2014年07月17日 12時23分(最終更新 07月17日 12時53分)

 ジュネーブで開催中の国連のB規約(市民的、政治的権利)人権委員会は16日までの2日間、日本の人権状況を審査した。人種や民族などを理由に差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)が広がる現状に懸念が示され、日本政府に法整備など具体的な対策を促す声が上がった。

 イスラエルのシャニイ委員は、日本で昨年、在日コリアンらを排斥するデモや街宣が360回以上行われたとの報告があると指摘。ヘイトスピーチを禁止する「具体的な法律はないのか」とただした。

 日本政府の代表は、不特定多数の集団に向けられたヘイトスピーチ自体の規制は「表現の自由との関係から慎重に検討する必要がある」と答弁。差別や偏見の解消に向けた啓発活動に努めているとの説明に終始した。

 シャニイ委員は「人種的憎悪の唱道」を法律で禁止するとした国際人権規約の条項に触れ、「被害者が提訴できない場合もあり、国が抑制するのが好ましい」と述べ、刑法改正などによる取り締まりが必要と指摘した。

 複数の委員が袴田事件に触れ、死刑制度や代用監獄の問題が指摘されたほか、特定秘密保護法がメディアを萎縮させるとの懸念も出た。従軍慰安婦を「性奴隷とするのは不適切」とした日本政府の見解に傍聴席から拍手が起き、委員長が苦言を呈する一幕もあった。

 対日審査は2008年以来6年ぶり。改善勧告などを盛り込んだ「最終見解」を今月下旬に公表する。委員との意見交換に参加したNGO「反差別国際運動」の小森恵さんは、電話取材に「国連の場でもヘイトスピーチを巡る現状に憂慮が示された。勧告にも盛り込まれるのでは」と語った。【小泉大士】

最新写真特集