宮城のニュース
  • 記事を印刷

かすむ復興 まちづくり/巨大防潮堤の足元(3)地元合意に異議続出

高台から見下ろす海岸がコンクリートの防潮堤に覆われる=6月下旬、気仙沼市本吉町の小泉地区

<「変な地形に」>
 地元合意という防潮堤の「基盤」が揺らいでいる。
 「反対住民がいる状況をどう考えているのか」。今月3日、気仙沼市内で宮城県が開いた防潮堤の検討会。委員を務める東北大災害科学国際研究所の平野勝也准教授(45)は、険しい表情で会場を後にした。
 宮城県は同市本吉町小泉地区で海抜14.7メートル、最大幅約90メートルの台形型防潮堤を計画する。県内では最大規模だ。年内の本体着工を控え、地区への影響を探る目的で検討会が設置された。
 景観を専門とする平野准教授は検討会の席上、「変な地形になる」と設計変更を要求。県側は「地元から一刻も早い着工を求められている」と反論した。
 県は昨年11月に開いた住民説明会で同意を得たと判断しているものの、会場で賛成、反対の両派が激しい応酬を繰り広げた経緯がある。異論は専門家だけでなく、住民の間でもくすぶり続ける。
 「自然環境を残す価値を熟議しておらず、後世に責任を持てない」。建設見直しを求める住民組織の阿部正人さん(47)は、一歩も引かない構えを見せる。

<陳情は不採択>
 早期着工か、計画再考か。防潮堤をめぐって被災地が割れるのは、宮城県内に限らない。
 岩手県が海抜10.4メートルの直立式防潮堤を計画する宮古市鍬ケ崎地区。長さ1.6キロにわたる海岸線がコンクリートで固められる。
 県は昨年11月の住民説明会で「地元理解を得た」という立場をとる。が、ここでも異議申し立てが止まらない。
 「初めて具体的な説明を受けた。その場で意見が出るわけがない」。鍬ケ崎地区角力浜町内会の鳥居清蔵会長(75)はいら立ちを隠さない。
 「県や市に十分な説明を求める決議を」との市議会への陳情は、6月定例会で全会一致で不採択になった。鳥居さんは現在、住民勉強会の設立に奔走している。
 行政側が合意形成を急ぐ背景には、国の予算が確保される集中復興期間(2011〜15年度)の期限がある。期間内の完成を目指す姿勢は、一部住民に「前のめり」と映る。

<ため息混じり>
 「おおむね地権者の合意を取り付けた」として、宮城県が海抜6.8メートルの防潮堤を建設する七ケ浜町の表浜。町内のNPO法人「七ケ浜の100年を考える会」の代表稲妻公志さん(65)が、ため息混じりに話した。
 「海岸はいわば地域の資産。今後どう生かしていくのかという話し合いの場さえなかったのは、残念だ」


2014年07月18日金曜日

関連ページ: 宮城 社会 特集

記事データベース
先頭に戻る