「『個』のエンパワーメント」がランサーズの目的
ランサーズ・足立和久氏:ランサーズは2008年にスタートしたサービスです。ファウンダーである秋好陽介が学生時代にフリーランサーとして収入を得ており、その後、サラリーマン時代に発注者側を経験したことから、受注者と発注者をマッチングするサービスをつくりたいと考え、始まりました。クラウドソーシングはインターネットを通して、文字通り群衆に業務を委託できるアウトソーシングの新たな発注形態だと考えています。まだまだ始まったばかりで、成功事例もあるものの、課題もあるのが現状。手探りでサービスの運営を行っています。
ビジネスモデルは、オンライン上で仕事を発注し、フリーランスが成果物の納品を行い、その取引額に対して、プラットフォームフィーを取るというものです。現在のフリーランスの登録者数は約29万人。具体的には、出産を機にフリーなり育児をしながらWeb制作をやっている方や、ハワイに移住し現地で生活しながら仕事を受注している方、定年後も何らかの仕事をしたいとライター活動をしている元大学教授などがいます。発注側の企業は、8.7万社が登録、利用しており、その中にはパナソニックやユニバーサルミュージック、日清食品などの企業が含まれています。
僕らは「『個』のエンパワーメント」を会社の目的としています。ファウンダーである秋好の経験もあり、「フリーランスの自己実現や生活の充実を支援するために、何ができるのだろうか」と考えながら、サービスを運営しているのです。フリーランスの人たちが、個人の価値観にあった働き方ができたり、QOLをコントロールできるような生活を選べるようなプラットフォームでありたいと思っています。
一方で、クライアント側は、一人ひとりの個人には力量の差はあるものの、集合した群衆に対して、オーダーを投げることにで、ニーズにあったものを獲得することができる。つまり、働き手を流動的なリソースとして使うことで、企業側のメリットにつなげていただいているというのが現状です。
現在の注力分野としては、プラットフォームビジネスに加えて、ランサーズが仕事を受注するビジネスをスタートしています。これはクライアントのディレクション負担を軽減したり、納品物に対するクオリティ、瑕疵担保をするために、クラウドソーシングのリソースは使うもののランサーズが間に入るという形になっています。
また、「ランサーズマイチーム」という、プラットフォーム上で複数のフリーランスがチームを作って仕事を受注できる仕組みをスタートしています。(オンラインコワーキング)。例えば、企業がホームページの作成を発注したい場合には、デザイナー一人では受注することができません。チームを作り、エンジニアなどと協力して、クライアントのニーズを満たす仕組みを提供しています。
このサービスは半年ほど前にリリースしたのですが、その間に5~6倍の伸びを見せています。クライアントが一個人に発注するレベルのものを超えてクラウドソーシングを利用する傾向が出てきています。また、働く側もネット上でコワーキングを して納品をしていくというケースが増えていて、ここに我々の将来像があるかなと考えています。
我々は、ディレクション業務が非常に重要だと考えています。クライアントは、ビジネス上の課題を持っており、フリーランスは制作や業務遂行を行うわけですが、その過程には、クライアントの課題をどのように解決するか、という要件定義などのディレクション業務が存在します。この領域は現在、クライアント側が持つ場合もあれば、フリーランス側が提案する場合、あるいは第三者がディレクターとして入る場合もあります。ここを最適化する、あるいは拡大することで、ランサーズ上で行われる仕事の多様性を高められると考えています。
ランサーズの登場によって、個人の方がオンライン上で仕事ができるという状況は徐々に作れてきていると思うが、個人の方の仕事が企業様にとってより魅力的である、価値があるものになるためには、間の工程をどうデザインするかが重要になってきます。ここをコントロールすることで、個人の方の仕事の価値が何倍にもなると考えています。企業とフリーランスをつなぐディレクション業務の質を高めることで、個人の労働の付加価値も高めることをランサーズは目指しています。
日本の“ものづくり”に革新をもたらすことができる
クラウドワークス・吉田浩一郎氏:我々は、先日の日経新聞で「第二のソフトバンク」という形で急成長している企業として紹介されています。また、健康医療分野のサイバーダイン、エネルギー分野のエリーパワーなどと並んで、日本政府からも注目されている企業です。個人のリソースをインターネットでシェアするというビジネスは、アメリカでも注目を集めており、私は21世紀のメイントレンドになると考えています。クラウドワークス、クラウドソーシングは個人のスキルの空き枠、空いた時間をシェアする、シェアリングエコノミーの一環です。クラウドソーシングが普及すれば、日本中、世界中の人々のスキルが「見える化」され、空き時間がわかり、そこに対して企業がダイレクトにアクセスできるという世の中が実現します。それによって、企業は人材調達の新たな手法を手に入れることができます。すべての業界で “持たざる経営”、自社でリソースを抱えない経営がトレンドになってきていますので、このクラウドソーシングは、日本、そしてグローバルにおいて必ず来ると確信しています。
クラウドソーシングのメリットは2つ。一つは圧倒的なコストダウン。そして21世紀のビジネスモデルであるオープンイノベーションです。特に日本は人材紹介が非常にクローズドマーケットになっていました。人材になかなか企業がアクセスできないし、するのにお金がかかる。1ヶ月、2ヶ月掛けて人材を探し出し、手数料をかけて雇う。しかし、クラウドソーシングならば、たった15分で人材が調達できる。
そして、我々のサービスを利用して経産省をはじめ、ソニーや伊藤忠、富士フィルム、ヤマハといった錚々たる企業が数万円という非常に安いコストでものづくりを開始しています。日本では個人というものが、“信用されていないもの”と考えられていました。ですので、経済産業省が個人、フリーランスの力を活用した事は非常に大きなインパクトがありました。そして、外務省や国土交通省、総務省からも発注を受けています。4つの省庁から受注を得ているクラウドソーシング企業は我々だけですし、中央官庁だけでなく、地方自治体も数多く利用しています。
また、オープンイノベーションの事例としては、ボンカレーのキャッチフレーズを募集した案件があります。このキャッチフレーズを「ユーザーと一緒に作ろう」という仕組みにしたところ、たった10万円の予算にも関わらず、1週間で4900件の提案が集まりました。そして、このような形で皆さんが「面白い」ということをソーシャルで拡散してくれました。これからのものづくりは、成果物だけではなくソーシャルメディアを通して、製作の過程も楽しむような状況になってきています。
私自身、20代のころメーカーに勤務していました。瀕死にある日本のものづくりを変えていきたいという思いがあります。持たざる経営とオープンイノベーションを持ち込むことで、日本のものづくりに革新をもたらすことができると考えています。
我々は創業からわずか2年にも関わらず3万5千社のクライアントを抱えており、政府やメディア、メーカー、自治体と多様な業種にご利用いただいています。取引量は、創業以来27倍に成長し、月刊の取引量では日本一だと考えています。もしかしたら、ランサーズは違う意見をお持ちかもしれませんが(笑)。そして、日本だけでもクラウドソーシングの市場は、10年後2023年には1兆円になると我々は試算しています。
クラウドソーシングは働く側の環境も大きく変えていきます。その証拠に我々のサービス利用者の8割が東京以外に住んでいるのです。現在、日本は東京以外の地域のビジネス環境が低下していますので、このサービスを通じて、活性化させたいと考えています。また、クラウドワークスはグローバルでもメジャーなサービスであり、150カ国からアクセスがあり、会員登録・利用をいただいています。日本は正社員が20世紀のスタンダードでした。定年退職した後、仕事がないという状況が一般的でしたが、我々のサービスでは85歳まで実際に働いている実績があります。また、福島県とも提携して、震災復興、地域活性化も行っています。
そして、この我々のチャレンジのために、クラウドソーシング業界の中で最大の額である14億円の出資を電通などの企業から受けているのです。
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