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ブラジルで体験した、アウェイの気持ち。そして日本代表に、今必要なこと

「ブラジルW杯総括」

今回ブラジルに行ってみて、普段中継で行くのとは全然違い、「中継をしているとこんなにも見えないことがあるんだ」と、とても勉強になりました。

メディアは入口も違うし、中継席に入ると安全で、隔離される。今回は、普通のところから入場しているから、メディアの人たちとも会わないし、凄く長い列の中をがちゃがちゃ行って、いろんな国の人と遊びながら向かいましたよ。飲んだり食べたりしながらね。会場に入れば、いろんな歌が聞こえてくる。いつもはヘッドセットを付けているから、生声では聞けません。なるほどこんな歌を歌っていたんだな、コロンビアのチャントは5つなんだな、チリは3つだな、とか。放送席にいては絶対に分からないことを見られて、聞けて、とても勉強になりました。

 

 実際見たW杯は、本当にレベルが高くて、これじゃ日本は勝てないと思いました。死にもの狂いにならないとね。スタジアムの人たちはW杯を楽しもうとしていて、好意的に見てくれているし、決してアウェイの環境では無いと感じました。そういう人たちがたくさんいる環境で、気持ちが負けないかどうか。そこで負けちゃう人が多かったですね。負けないで頑張れたコスタリカとかコロンビアはやれましたよね。うちの代表はもう一回やっても、ダメだったかもしれません。

 

果たして日本代表は走ったのでしょうか。アルゼンチンはマスチェラーノのチームでした。こういう風に走れ、と指示して、みんな走っていた。それが出来る一つの理由に、ナショナリティがあると思います。僕たちはこの国の人たちです!というのを南米勢から感じました。ドイツもそうでしょう。最終的にベスト4に残れるのは、歴史がある国だけ。そこにはどうやっても届かない気がしました。勝者のメンタリティは、絶対に勝者からしか生まれませんし、教えることが出来ないものです。それを歴史あるチームは持っているんですよ。子供のころから。日本が今後フロックでも一回でも上がれれば、掴めるのかもしれませんが。

 

翻ってブラジルの話をすると、良いところと悪いところがありました。

 

良いところは、伝えていくところ。マリーニョさんは、テレビは指導である、と言っています。ブラジルではなぜこのプレイが良かったか分析したり、識者が切り口をたくさん教えてくれたりする番組が沢山あります。日本にはそういう番組、あんまり無いですよね。ハイライト番組があっても、1つの試合について、1時間も2時間も話す番組は無い。それは一つ、今後必要なのかな、と思いました。あとブラジルでは過去の映像をたくさん流していました。そのおかげで、見たことのある試合が子供たちにもたくさんある。伝説の試合とか名勝負は、ほぼ見ているでしょう。それがブラジルのいいところですね。

 

逆に悪いと言われているところは、ブラジルらしい選手がいなくなってしまったこと。15年前に「カカ」という選手が出てきて、ヨーロッパに高く売れて以降、ブラジルではカカのような選手をたくさん生み出す方法をとったんです。そのためロビーニョのような、小さくてうまい選手やドリブラーは追いやられていきました。結局カカのような選手が増え、今回のW杯で、ブラジルらしい選手はネイマール一人だけになってしまいましたよね。

 

ブラジルはものすごいプレッシャーの中で戦っていました。泣いてしまうくらい。国家斉唱で泣いていたのは、プレッシャーのせいでしょう。ネイマールはもの凄い数のCMに出ていましたし、みんながネイマールと書いたユニフォームを着ていました。あれはたまらないですよ。普通なら吐いてしまいますよ。ただその中でも、良くやっていたんじゃないでしょうか。

今回ブラジルにいた時、ヴィトーリアというクラブの取材にいくことがあったんです。クラブには大通りを通ってもいけたんですが、その時の運転手さんが、わざわざファベーラ(ブラジルにおけるスラム街の俗称)の道を選んだ。赤い砂埃が舞うような場所でとても怖かった。

そのとき一緒だったマリーニョさんに、ここ怖いですよね、と聞いたんです。するとマリーニョさんは、「これがアウェイの気持ちだ」と言ったんです。ふつうに居ても、おそらく何ともない場所。でも走って逃げた途端、急に怖くなる。夜は絶対にダメですが、昼間なら歩いても平気。でも逃げ出したら違う。それがアウェイの気持ちなんだそうです。

 

その場所にも、一つゴールがありました。子供たちはそこで、延々と1対1をやるそうです。そういう環境で、数限りないほど、1対1をする。それで駆け引きを覚え、アイデアが出てきて、経験が出来る。決定力はアイデアと経験。こいつだったら俺の方が上手いと思えるかどうか。決勝戦でノイヤーに対してアルゼンチンの選手が決められなかったのは、ノイヤーの方が「俺の方が上手い」と思う気持ちが強かったのでしょう。

 

 日本はブレブレだったと思います。日本のサッカーが目指すスタイルは、やれドイツだ、メキシコだ、スペインだ、と。日本のサッカーってどうするの?

 

私は攻めたり守ったり、両方はできないと思いました。あのレベルでは。トップの方には全然勝てない。7つ勝つのは、本当に難しい。一個か二個なら勝てるかもしれませんが。だったらどうするのか。攻撃は水物ですから、やっぱり守る方だと思います。アルゼンチンみたいに守れるか。私は日本なら、それが出来ると思います。そういうサッカーを目指すべきだったかもしれません。

 

これから私たちが出来ることは、ディフェンスにまずスポットを当てること。今はあまりありませんよね。個人の選手がどうだったとかは、あるかもしれませんが、どのように守っているとか、どういう体の向きだったとか、解説者の遠藤雅大さんが言うようなことは、誰も言わない。ハイライト一つにしても、あの選手がシュートしました、というモノが多い。そうではなく、誰がコースを切っていた、ブロックしていたからシュートが外れた、ということをもっと言うべきなんです。それを除いて、シュートが入りませんでした、では上手くなれるわけないんですよ。中継の力も上がらないんです。こういう気持ちを今後みんなで共有できたらいいですね。

-倉敷保雄

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ブラジルで体験した、アウェイの気持ち。そして日本代表に、今必要なこと

「ブラジルW杯総括」

今回ブラジルに行ってみて、普段中継で行くのとは全然違い、「中継をしているとこんなにも見えないことがあるんだ」と、とても勉強になりました。

メディアは入口も違うし、中継席に入ると安全で、隔離される。今回は、普通のところから入場しているから、メディアの人たちとも会わないし、凄く長い列の中をがちゃがちゃ行って、いろんな国の人と遊びながら向かいましたよ。飲んだり食べたりしながらね。会場に入れば、いろんな歌が聞こえてくる。いつもはヘッドセットを付けているから、生声では聞けません。なるほどこんな歌を歌っていたんだな、コロンビアのチャントは5つなんだな、チリは3つだな、とか。放送席にいては絶対に分からないことを見られて、聞けて、とても勉強になりました。

 

 実際見たW杯は、本当にレベルが高くて、これじゃ日本は勝てないと思いました。死にもの狂いにならないとね。スタジアムの人たちはW杯を楽しもうとしていて、好意的に見てくれているし、決してアウェイの環境では無いと感じました。そういう人たちがたくさんいる環境で、気持ちが負けないかどうか。そこで負けちゃう人が多かったですね。負けないで頑張れたコスタリカとかコロンビアはやれましたよね。うちの代表はもう一回やっても、ダメだったかもしれません。

 

果たして日本代表は走ったのでしょうか。アルゼンチンはマスチェラーノのチームでした。こういう風に走れ、と指示して、みんな走っていた。それが出来る一つの理由に、ナショナリティがあると思います。僕たちはこの国の人たちです!というのを南米勢から感じました。ドイツもそうでしょう。最終的にベスト4に残れるのは、歴史がある国だけ。そこにはどうやっても届かない気がしました。勝者のメンタリティは、絶対に勝者からしか生まれませんし、教えることが出来ないものです。それを歴史あるチームは持っているんですよ。子供のころから。日本が今後フロックでも一回でも上がれれば、掴めるのかもしれませんが。

 

翻ってブラジルの話をすると、良いところと悪いところがありました。

 

良いところは、伝えていくところ。マリーニョさんは、テレビは指導である、と言っています。ブラジルではなぜこのプレイが良かったか分析したり、識者が切り口をたくさん教えてくれたりする番組が沢山あります。日本にはそういう番組、あんまり無いですよね。ハイライト番組があっても、1つの試合について、1時間も2時間も話す番組は無い。それは一つ、今後必要なのかな、と思いました。あとブラジルでは過去の映像をたくさん流していました。そのおかげで、見たことのある試合が子供たちにもたくさんある。伝説の試合とか名勝負は、ほぼ見ているでしょう。それがブラジルのいいところですね。

 

逆に悪いと言われているところは、ブラジルらしい選手がいなくなってしまったこと。15年前に「カカ」という選手が出てきて、ヨーロッパに高く売れて以降、ブラジルではカカのような選手をたくさん生み出す方法をとったんです。そのためロビーニョのような、小さくてうまい選手やドリブラーは追いやられていきました。結局カカのような選手が増え、今回のW杯で、ブラジルらしい選手はネイマール一人だけになってしまいましたよね。

 

ブラジルはものすごいプレッシャーの中で戦っていました。泣いてしまうくらい。国家斉唱で泣いていたのは、プレッシャーのせいでしょう。ネイマールはもの凄い数のCMに出ていましたし、みんながネイマールと書いたユニフォームを着ていました。あれはたまらないですよ。普通なら吐いてしまいますよ。ただその中でも、良くやっていたんじゃないでしょうか。

今回ブラジルにいた時、ヴィトーリアというクラブの取材にいくことがあったんです。クラブには大通りを通ってもいけたんですが、その時の運転手さんが、わざわざファベーラ(ブラジルにおけるスラム街の俗称)の道を選んだ。赤い砂埃が舞うような場所でとても怖かった。

そのとき一緒だったマリーニョさんに、ここ怖いですよね、と聞いたんです。するとマリーニョさんは、「これがアウェイの気持ちだ」と言ったんです。ふつうに居ても、おそらく何ともない場所。でも走って逃げた途端、急に怖くなる。夜は絶対にダメですが、昼間なら歩いても平気。でも逃げ出したら違う。それがアウェイの気持ちなんだそうです。

 

その場所にも、一つゴールがありました。子供たちはそこで、延々と1対1をやるそうです。そういう環境で、数限りないほど、1対1をする。それで駆け引きを覚え、アイデアが出てきて、経験が出来る。決定力はアイデアと経験。こいつだったら俺の方が上手いと思えるかどうか。決勝戦でノイヤーに対してアルゼンチンの選手が決められなかったのは、ノイヤーの方が「俺の方が上手い」と思う気持ちが強かったのでしょう。

 

 日本はブレブレだったと思います。日本のサッカーが目指すスタイルは、やれドイツだ、メキシコだ、スペインだ、と。日本のサッカーってどうするの?

 

私は攻めたり守ったり、両方はできないと思いました。あのレベルでは。トップの方には全然勝てない。7つ勝つのは、本当に難しい。一個か二個なら勝てるかもしれませんが。だったらどうするのか。攻撃は水物ですから、やっぱり守る方だと思います。アルゼンチンみたいに守れるか。私は日本なら、それが出来ると思います。そういうサッカーを目指すべきだったかもしれません。

 

これから私たちが出来ることは、ディフェンスにまずスポットを当てること。今はあまりありませんよね。個人の選手がどうだったとかは、あるかもしれませんが、どのように守っているとか、どういう体の向きだったとか、解説者の遠藤雅大さんが言うようなことは、誰も言わない。ハイライト一つにしても、あの選手がシュートしました、というモノが多い。そうではなく、誰がコースを切っていた、ブロックしていたからシュートが外れた、ということをもっと言うべきなんです。それを除いて、シュートが入りませんでした、では上手くなれるわけないんですよ。中継の力も上がらないんです。こういう気持ちを今後みんなで共有できたらいいですね。

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