Bloomberg
「必要は発明の母」と言うが、アップルとIBMの場合、必要なのは新たな販売経路だった。
かつてライバル同士だった両社が法人向けテクノロジー市場で提携するとのニュースは、驚きを持って迎えられた。だが、ある意味では意外ではないかもしれない。両社とも成長面での課題と格闘しているからだ。
この課題に対応するため、アップルは広範なアプローチを採用。中国などへのiPhone(アイフォーン)進出拡大、米音楽配信・音響機器製造ビーツ・エレクトロニクス買収といった戦略を組み合わせている。大型スクリーンのiPhoneやスマートウオッチを開発しているとも伝えられている。
IBMとの提携もこうした取り組みの一つだ。IBMは、特殊なアプリケーションとモバイルサービスを開発し、アイフォーンやiPad(アイパッド)とともに顧客企業に売り込む。こうした動きはアップルがこの市場で正当な地位を得る一助になる。
アップルの製品は長らくビジネスで使われているが、「BYOD(Bring Your Own Device)」(企業の従業員が会社支給ではない私物のモバイル端末を業務で利用すること)で使用されることが多い。一方、多くの企業のテクノロジー担当責任者は依然、中央管理のしやすいブラックベリーなどのプラットフォームを支持している。
IBMにとって提携のメリットは、人気ブランドとのつながりで、「モバイルファースト」のようなサービスの需要拡大に結びつく可能性がある。モバイルファーストは企業のモバイル機器管理の簡素化を支援するため昨年立ち上げた。提携のニュースは、競合サービスを提供するブラックベリーや上場したばかりのモバイルアイアンの株価を圧迫した。
アップルとIBMの提携の利点を推し量るのは難しそうだが、メリットは徐々に増えそうだ。ブラックベリーが過去2四半期に販売したスマートフォンが約600万台だったのに対し、アイフォーンは9500万台弱だった。アップルとIBMはソフトウエアとサービスによる収入を共有する公算が大きいが、発表ではそうした詳細にあまり触れなかった。
両社は成長が可能な分野を伸ばしていくだろう。小さな案件だが効果は大きいかもしれない。