果たしてこれが、国民の「知る権利」を守るための、実効的な「歯止め」とな…[続きを読む]
血のつながりはないことが科学的に証明されても、法的な父子の関係は取り消…
血のつながりはないことが科学的に証明されても、法的な父子の関係は取り消せない。
DNA型鑑定で親子の血縁が手軽に分かるようになったなかでの、最高裁の判断だ。
法的な親子には相続、扶養など様々な権利、義務が伴う。父子として築いてきた関係を血縁がないという一点で否定するべきではない。そうした最高裁の考え方は理解できる。
一方、妻が夫以外の男性と子どもをもち、その後に離婚して3人で新生活を始めたケースでも、子の法的な父は前夫。血縁も育てる意思もある人が法的な父になれない結論に割り切れなさを感じる人もいるだろう。
明治以来の民法で対応する無理も出ている。現代に適応した親子の法制度を検討すべきだ。
産んだ母と子の親子関係は明らかにわかるが、父と子は血縁が必ずしもわからない。
民法は産んだ人を母とし、母が妊娠時の夫を父とする嫡出(ちゃくしゅつ)推定という考え方をとってきた。夫婦の別居など外観上、妊娠の機会がありえないときに限り、その例外となる。
嫡出推定のねらいは、父を早く確定して子の利益を守り、妻の不貞といった各家庭の事情を公にさせないことにあった。
しかし、法的に夫婦であるというだけで父を決めるルールが、子や親の大きな負担となるケースも目立っている。
例えば、暴力をふるう夫から逃げた妻が次のパートナーともうけた子の父は、戸籍の上では夫となる。夫が否認すれば父子関係は消えるが、その協力が期待できず、出生届を出すことをためらった結果、子が無戸籍の状態になるケースがある。
離婚しても300日内に生まれた子の父は別れた夫となる。現実にはこれから離婚する夫婦が子をもうけるより、妻と新しいパートナーとの間の子であるケースがずっと多いだろう。
婚姻届を出す前に相手との子を出産することはもはや珍しくないが、民法は結婚後200日を過ぎた後の出産でない場合は夫の子と推定しない。
そうした場合は個別に救済するしくみがあるとはいえ、父だと推定する範囲を、現実に合うように見直すべきではないか。判決の補足意見も、立法の課題とするよう促している。
父の側からは、出生を知ってから1年間は血縁がないことを理由に父であることを否認できる。子や母の側から父子関係がないとする訴えも、より広く認める検討が必要だろう。
生まれた経緯で子を困らせないルールを考えたい。
PR比べてお得!