はる@虎狩R06 · @stellaSSL
27th Apr 2013 from TwitLonger
『現在ポセイドンモノレール、シルバーライン外回りは信号故障の影響で運転を一時見合わせております。復旧には30分ほどの遅れを目途としておりますが、お急ぎのお客様には大変ご迷惑をおかけいたします。駅に直結する階層間エレベーター、またはS.LOOPERへの御乗換えのご案内はお近くの駅員までお尋ねください。なお、内回りには遅れはございませんが、その影響で大変混雑しており―――』
「おい、マジかよぉ。モノレール乗っちまったのは失敗だったなバニー」
すし詰めの車内で虎徹は顎を擦りつつ、天井を仰いだ。
「サウスシルバーの駅が最寄でしたから、これは仕方ありませんね。タクシーでもよかったかもしれませんが」
「だってあの居酒屋お前と行きたかったんだもん」
「分かっていますよ。でも、流石にこの満員ぶりは堪えますね…」
二人が乗っているのは止まっている外回りでなく、内回りだった。けれど信号故障の影響で沿線の乗客がかなり流入していて、ただでさえ混む時間のモノレールは凄まじい事になっていた。
今日はたまたま取材と撮影の帰りにひったくりの現場に遭い、捕り物を終えて戻ったらそのまま定時で上がっていいと言われた。
バーナビーの仕事の忙しさを鑑みてもそんな事は滅多にないので、嬉しくて虎徹は行きつけだった居酒屋に久しぶりにバーナビーを誘った。
その後は当然虎徹の家に一緒に帰って、セックスもするつもりだった。
雑多にざわめく車内で虎徹は溜め息をつき、横のバーナビーを見た。
がくん、と発車しかけたモノレールが大きく揺れる。
せっかく駅に着いたというのに、駅員の怒号が聞こえた。
『危ないので無茶な駆け込み乗車はおやめ下さい!!他の方のご迷惑になります!!』
なんだよ、と車内も険悪な空気になった。
「とと!」
ふらついた虎徹をバーナビーがくん、とサスペンダーを引っ張って助けた。
「んぎ!」
サスペンダーに吊られ、スラックスごと下着がぐい、と強く食い込む。思わず声を上げれば、バーナビーはドアの端の所にスペースを作り器用に虎徹をそこへ促した。
「そこにいたら横倒しになるかもしれない。危ないですからこっちへ」
「てかお前それ癖になってねえ!?今日何回目だよ!」
「便利ですからね。貴方はいつでもどこでも困っている人を見つけると飛んで行ってしまうから」
「サスペンダーはそういう為に付けてんじゃねえっつうの…」
ぼやきつつも虎徹はバーナビーと座席の隙間の部分に遠慮なくお邪魔する。
モノレールは再び走り出したが、車内は120%くらいの乗車率かと思うような人の多さだった。乗れずに駅で後発のモノレールを待つ市民たちも多い。
はあ、と溜め息を付き、虎徹はモノレールの外に見えるシュテルンビルトの夜景に目を向けた。
予約なしでも入れそうな店だが、着くのが予定より大分遅くなってしまいそうだ。これは適当に引っ掛けて、さっさと家に着いてから飲み直しした方がいいかもしれないと、そんな事を考える。
明日も休みではないから、時間が勿体無い。
ここ2週間程セックスもご無沙汰だから、出来るタイミングは本当に貴重なのだ。
ちらりと窓越しに、後ろにいるバーナビーを見る。
車内も空調が効いているとはいえ暑い上に、バーナビーが苦手な人混みだ。それなのに涼しい顔をして、バーナビーは優しい目で虎徹を見ていた。
急にどきんと心臓が跳ねて、虎徹はざわ、と体の熱が上がったのを感じた。
これは大分身に覚えのある感覚だ。
それを打ち消そうともぞりと動いたのをどう思ったのか、不意にまたくん、と背中のサスペンダーを引かれて虎徹はびくんと背を反らせた。
不意だったから、思いきりサスペンダー越しに乳首が擦れた。
「だっ!?」
「少し背中からシャツが出ていましたので、直しました」
「あ~~~…そりゃどうも…」
他意はなかったろう。
けれどちょっと欲が燻った所での刺激に、バーナビーに触られ慣れて調教され切った体は敏感に反応してしまう。
じん、と胸に集まる鈍く淡い感覚に、虎徹は戸惑って眉をぎゅっと寄せた。