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宍戸博昭のSafety Blitz
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引退後、約8割の選手が自己破産 プロスポーツと「お金」

2013.7.24

2003年、当時NFL歴代2位となるシーズン通算2066ヤードを獲得した、レーベンズのRBルイス

プロ野球ドラフト会議で星稜高・松井秀喜選手の交渉権を獲得、ガッツポーズの巨人・長嶋茂雄監督=92年

Jリーグを引退後、バルセロナでクラブの経営学を学び、湘南ベルマーレで強化部長を務める大倉智さん=99年

NBAのスーパースターとして活躍し、現在はボブキャッツのオーナーを務めるマイケル・ジョーダン氏(右)=98年



 もうずいぶん昔のことである。乗っていたタクシーの車内で何気なく聞いていたラジオ番組で、作家で作詞家の山口洋子さんが興味深い話を紹介していた。


 プロ野球のドラフト会議で1位指名された2人の新人選手に「あなたにとってお金とは?」という質問をしたところ、一人は「汚いもの」、もう一人の選手からは「人生で一番大切なもの」というニュアンスの答えが返ってきたという。芸能界やスポーツ界に広い人脈を持つことでも知られる大人の女性の問いかけに対するゴールデンルーキーの対照的な反応は、強く印象に残っている。


 2カ月ほど前に、NHKが米国のプロスポーツに関する特集番組を放送していた。番組では、NFLで2003年シーズンにランで2066ヤードを記録した元ボルティモア・レーベンズのRBジャマール・ルイスさんが自己破産した事を取り上げていた。
 超一流の証である2000ヤード突破を達成したルイスさんは引退後、知識のない投資などに手を出し、40億円近くあった財産をあっという間に失ってしまったという。さらに番組では、NFL選手の8割近くが、引退後5年以内に自己破産しているという調査結果を伝えていた。
 ルイスさんは現在、トラック会社のセールスの仕事をしながら、講演会などで稼いだ資金で、金融について学んでいるという。


 プロスポーツの世界は、才能があれば大金を手にするチャンスがある。しかし、プレーヤーとしての成功は、そのまま人生の成功者としての「手形」にはならないようだ。高校時代からちやほやされ、世の中のことを何も知らないままプロの世界に入る。生まれ育った環境は貧しくても、奨学金付きで入学した大学時代から経済的に困った経験がないから、勘違いしてしまうのかもしれない。


 プロなのだから全くお金に無頓着でいいとは思わない。しかし、お金に執着しすぎるのもいかがなものか。NFLでは鳴り物入りで入団した大物新人が契約の問題でもめ、キャンプに参加しなかったりするケースがよくある。夢を売る商売はお金の臭いがしない方が、ファンとしては応援したくなるものだ。


 余談だが、山口さんはご自身の著書でこんなエピソードを紹介している。社会的に成功し経済力があり見栄えもいい男性と高級レストランで食事をしたときのお話。いざ会計という段になって、その男性の財布から小銭がこぼれた。ころころ転がるその硬貨を、背中を丸めて追いかける姿に、それまでのイメージが壊れ百年の恋もさめてしまった、という。
 カード社会になり、現金で支払う場面はめっきり減ったが、コンビニでコインを落とすと、ふとこの話が頭をよぎる。

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