先に挙げたせんとくんのほか、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」などがゆるキャラとして知られる。中央省庁や警察にもあり、警視庁の「ぴーぽ君」を見た人は少なくないかもしれないが、多くのキャラクターは知られないままだ。東京都の新宿区や足立区、板橋区、江戸川区などにも観光や防犯キャラクターがあり、地方の自治体になるともっと多い。「ゆるキャラさみっと協会」に登録している会員キャラは北海道から沖縄まで約100キャラもある。この中で全国的な話題を獲得するのは相当難しい。
せんとくんもひこにゃんも、実はトラブルが注目度を高めた側面がある。せんとくんはデザインに対して地元からも批判が起き、「まんとくん」「なーむくん」という対抗する独自キャラクターも生み出された。ひこにゃんも原案者とのトラブルが起こっている。これらがニュースとなって全国に流れ、さらに話題を呼ぶという循環である。まんべくんは、自ら話題をつくって有名になった。途中までは…。
ソーシャルメディアは発信するだけでなく、ユーザーと双方向のコミュニケーションが可能だ。そのコミュニケーションを使って、相手に突っ込んだり「キレて」みたりすることで、炎上が加速する。当たり障りのない発言では知名度は上がらない。フォロワーを集めることを真っ先に考えたときに、炎上マーケティングを選んでも不思議はない。キワモノだからこそ人気がでるというのは世の常だ。
だが、炎上マーケティングにはリスクがある。態度を面白いと思う人もいれば、不快に思う人もいる。たとえ、ゆるキャラの発言でも言い訳できない話題もある。
■広報戦略と整合性をもたせているか
今回の事例で、自治体や企業にとって教訓となる点は何か。まずは自治体の職員が自らソーシャルメディアを利用せず、外部に運用を「丸投げ」していた点と町の広報方針との不整合だ。同町の総務課はマスメディアへの取材に対し「町としてはかわいいキャラを目指しているので、そんなに毒舌で売らなくても…」と困惑気味にコメントしていた。
ソーシャルメディアが注目されているが、よく分からないから、外部のコンサルタントや運営会社に取り組みを任せ、マスメディアで取り上げられれば不整合でも推進し、トラブルになったら中止や閉鎖し、なかったことにする。そこには戦略性は見られない。
このようなソーシャルメディア利用は自治体だけでなく、企業にも起き得ることだ。ゆるキャラにしても、ソーシャルメディア活用にしても、明確な目標なくブームになっているから取り組むという側面はないだろうか。
藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。学習院大学非常勤講師。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。
ツイッター、炎上マーケティング、まんべくん、ソーシャルメディアの歩き方
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