日馬富士に土をつけた嘉風(奥)=愛知県体育館で(七森祐也撮影)
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◇名古屋場所<4日目>
平幕の嘉風(尾車)が横綱日馬富士(30)=伊勢ケ浜=を肩透かしで破った。32歳3カ月27日での初金星は史上最年長記録(年6場所制となった1958年以降に初土俵)。日馬富士は初黒星を喫した。白鵬は豊真将を寄り切り、鶴竜とともに初日から4連勝。大関陣はかど番の琴奨菊が4連勝とし、稀勢の里は勢を寄り倒して3勝目。
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32歳3カ月27日にして初めての金星だ。嘉風は立ち合いで日馬富士を左からいなし、土俵際まで攻め込む。こらえられたものの、相手の下手を切って鮮やかに肩透かし。座布団の舞う景色の中、ちょっぴり放心状態のような感覚に浸った。
「あんまり実感が湧かないです。横綱に勝ったのがとてもうれしいし、何か言葉にならない。(取組中は)自分と横綱が相撲を取っているのを、横から見ている感じだった」
年6場所制となった1958年以降に初土俵を踏んだ力士で最年長の初金星。「マジっすか? そういう記録はうれしいですね」とニッコリ。さらに新小結だった夏場所に続く日馬富士撃破とあって、喜びと戸惑いの気持ちが交錯しているようだった。
今場所の横綱は3人とも初日から3連勝。その戦いぶりから嘉風は勝機を探っていた。「3横綱を見ていると攻め込まれても落ち着いてさばく印象だった。もし、(自分が)いい形になったら勝負どころを逃さないようにしようと思っていた」。事前の分析が功を奏したのか、日馬富士に攻め込ませるスキすらほとんど与えない内容だった。
32歳は、角界ならベテランの域に入る。他のスポーツをみれば、プロ野球界では48歳の中日・山本昌を筆頭に40代の選手が数多くいる。サッカー界でも47歳のカズが今も現役だ。彼らは時に「レジェンド」と呼ばれる。嘉風は史上4番目のスロー昇進で新三役となった夏場所の番付発表会見で、こんなことを言っていた。
「40歳で幕内にいてそう言われたらいい。ベテランだけど若々しく相撲を取っていきたい」
迎えの車に乗り込むところまで報道陣に囲まれ「うれしいっすね。病みつきになるわー」とノリノリ。まだまだ若さあふれる嘉風が名古屋場所を、そして角界を盛り上げてくれそうだ。 (永井響太)
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