東京レター
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【経済】完全養殖マグロ 量産へ 近大と豊田通商 提携拡大
世界で初めてクロマグロ(本マグロ)の完全養殖に成功した近畿大学は十六日、豊田通商との提携関係を拡大し、大量生産を始めると発表した。同大の技術を使い産卵や稚魚育成を行う種苗センターを長崎県五島市に建設し、二〇一五年五月に稼働。二〇年に国内の養殖需要の半分に相当する年間三十万尾の「近大マグロ」を生産する計画だ。 近大マグロをより安定的に出荷できるようにすることで、乱獲の影響で激減する天然の資源の保護やマグロの価格上昇を抑えることにもつながりそうだ。 近大と豊田通商は一〇年から提携。同大が完全養殖で生産した約五センチの稚魚を五島市の豊田通商の別の施設に運び、三〇センチまで育てた後に養殖業者に販売する事業を始めた。昨年は二万五千尾の成育に成功した。 だが、生産施設がある和歌山県内などから船で稚魚を運搬する際に、多くがストレスで死んでいた。産卵やふ化など一連の工程を五島市で行い、生存率を向上させる。 現在、近大マグロが食べられるのは、昨年十二月に東京・銀座にオープンした専門店など一部に限られている。十六日に記者会見した近大水産研究所の宮下盛(しげる)所長は「完全養殖の量産化を視野に入れたとき、豊田通商と一緒に展開すれば可能となる。海外に打って出るときにも追い風になる」と話した。 豊田通商の加留部淳(かるべじゅん)社長は「天然マグロの保護につながる社会的意義の大きな事業だ」と強調。「五年で投資を回収しなければならない社内ルールから外れた事業だが、十年かけてでも絶対に成功させる」と意気込みを述べた。 水産庁によると、昨年のクロマグロの漁獲量一万八千トンのうち天然物は45%にとどまり、残りを養殖で補っている。養殖のほとんどは三歳以下で成長途中の幼魚を捕まえ、沿岸のいけすに移して育て出荷している。 マグロ捕獲の国際的な規制方針もあり、水産庁は三月、産卵前の幼魚の漁獲量を50%削減する方針を打ち出していた。 <完全養殖> 人工飼育した成魚から卵を採り、ふ化させて成長させたあと、さらに産卵させるサイクルを繰り返す養殖方法。マグロやウナギは、幼魚や稚魚を捕まえ、いけすなどで養殖する方法が主流で、天然資源へのダメージが大きい。一方、完全養殖は天然資源を傷つけないが、技術的に難しかったりコストがかかることが多い。近畿大学は2002年にクロマグロの完全養殖に成功し、注目を集めた。 PR情報
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